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カイル・マクドナルドのインタヴュー公開

2017年6月22日 16:12

カイル・マクドナルド

「チャンネルICC」内のポッドキャスト・サーヴィスで,「オープン・スペース 2017 未来の再創造」出品作家のカイル・マクドナルドのインタヴューを公開しました.今回は,インタヴュー内容の抄訳をご紹介します.


「オープン・スペース 2017 未来の再創造」出品作家インタヴュー
カイル・マクドナルド


カイル・マクドナルドです.ヨナス・ヨンゲヤンと一緒に手がけた《群衆を書き尽くす》というプロジェクトを展示しています.

《群衆を書き尽くす》は,ロンドンのピカデリー・サーカスを12時間分記録した映像集で,インターネットで公開されています.サイトにアクセスした人は,映像の中で起こっていることについて,自由にメモやコメントを残していくことができます.ここ数年で約5万件の投稿があったのですが,鳩がある場所から他の場所へ歩いたといったようなごく小さな出来事から,夜のロンドンに居合わせた複数の人物をコメントで導いていくかのような複雑なものまで,内容はさまざまです.今回ICCで展示するので,今後は日本語の投稿が増えていくんでしょうね.

この作品の制作のきっかけとなったものはいくつかあるんですが,そのひとつがジョルジュ・ペレックが70年代に書いた60ページくらいの本です.ペレックはパリにあるベンチに三日間座って,通過するバスや自分の友達が少し離れたカフェまで歩いていくところ,またはキスしている人やベンチに座って誰かを待っている人など,目に入ったものをすべて書き残そうとしました.当初ペレックは,このように三日間にわたってあらゆる瞬間を書き尽くすということを,客観的に記録をとることだととらえていました.しかししだいに,自分のこれまでの主観的な経験や,言葉で世界を構築するやり方,またはどこに座っているかなどによって文章が形作られること,つまり人が何かを認知するとき,必ずその人のバイアスがかかってしまうことを意識するようになります.僕がこの本を読んだとき,(ペレックのように)たった一人でベンチに座る代わりに,インターネットとその背後にいる多くの人々と一緒に,この本の現代版を作ったら面白いんじゃないかと思いました.

客観的な記録をとったりなにかを決めようとするとき,バイアスがかかっている可能性は常にあります.これは,とても現代的な問題です.機械学習の発展によって,人間の代わりに自動的に判断を下すシステムがどんどん増えているからです.でも,システムには設計した人間がいるわけですから,もしシステムにバイアスがかかっているのだとしたら,それは作った人に起因しています.ちょうどペレックの本に,作家本人というバイアスが反映されているのと同じように.このこと自体は,必ずしも悪いことではないと思います.事態が悪くなるかどうかは,そのシステムを作ったり組み立てたりする人にかかっているのです.だから我々ができる最善のことは,こういったアルゴリズムがどのように動いているかや,我々自身が社会をどう構築しているか,または我々が社会に何を望んでいるかについて,常に意識を向けておくということだと思います.



オープン・スペース 2017 未来の再創造
会期:2017年5月27日(土)—2018年3月11日(日)
会場:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]
開館時間:午前11時—午後6時
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日.なお,2/12[月]は休館,2/13[火]は開館),保守点検日(8/6,2/11),年末年始(12/28-1/4)
入場無料
主催:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

[Y.Y.]