椅子に座り,ヘッドマウントディスプレイとヘッドフォンを装着すると,目の前の大きな鏡のようなディスプレイに映し出された自分の姿を見ることができます.すると体験者は,ダンサーに導かれるようにして,「ここ」ではないさまざまな場所へとすばやく移動していきます.鏡のようにディスプレイに映った自分の姿は,たしかに自分であると確認できますが,自分と鏡像との動きの時間的なずれによって,見ているもののたしかさが揺さぶられ,自己と身体とが引き離されていきます.そうして,現実と仮想空間との境界があいまいになり,自分が見ているものが現実なのか虚構なのかの区別がつかなくなっていきます.
SRシステム(Substitutional Reality System:代替現実システム)は,理化学研究所脳科学総合研究センター適応知性研究チームによって開発されました.これまでのVR(ヴァーチュアル・リアリティ),AR(オーギュメンテッド・リアリティ)などの「仮想を現実に近づける」技術とは異なり,過去を現在と地続きのものとして挿入することで,現実と仮想の境界を取り払い,体験者の経験する主観的な「現実」そのものに影響を与えるものです.
体験時間は約8分です.
藤井直敬+GRINDER-MAN+evala
理化学研究所が開発したSR(代替現実)システムを用いた,新たなインタラクティヴ・パフォーマンス作品を協働で制作している.2011年,藤井直敬とGRINDER-MANのタグチヒトシとの共演をきっかけにプロジェクトをスタートさせ,これまでに没入体験型パフォーマンス作品《MIRAGE》(2012)を発表.