《レゾナント・エコーズ》は,坂本龍一の音楽を通じて,いかにリスナーが時間を横断することを可能にするかを探求した作品です.イエロー・マジック・オーケストラや坂本のソロ作「Riot in Lagos」(1980)における探究的な革新から,ソロによるピアノや映画音楽における深いノスタルジアにいたるまで,そのサウンドはリスナーにとって時空を超える旅の手段となります.
本作では,「レゾナンス(共鳴)」を,調和的なコンセプトと認知的なコンセプトの両面から探求することによって,この接続を理解し,ヴィジュアライズすることを試みています.スペクトル分析,AIによるヴィジュアル,生成的なリアルタイムによる再構築により,坂本の「Before Long」(1987)の各々の音符は時間的に変位した「記憶の対象」となり,相互に接続された時空の広大なネットワークにおいてノードを形成します.このノードのネットワークをヴィジュアライズすることで,記憶と意識の神経経路に似たものが浮かび上がります.
意識を,進化し続け,繋がり合ったネットワークとして描くことによって,有限であるという意識の前提が消滅します.《レゾナント・エコーズ》は,坂本の業績へのオマージュであると同時に,人間の認知体験の探求として,鑑賞者に,自らの記憶と意識との関係性について再考を促し,新たな発見へと導きます.
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坂本氏の作品は常にストレンジループ・スタジオに強く共鳴し,音楽をヴィジュアライズする手法に影響を与えてきました.ストレンジループ・スタジオは,BLACKPINKからフライング・ロータス,ピンク・フロイドのデイヴィッド・ギルモアにいたるまで,様々なアーティストと協働し,彼らのステージのヴィジュアルをデザインしてきました.私たちを異なる時空に誘う坂本氏の作曲がもたらす共感覚的な共鳴は,ストレンジループ・スタジオがこれまで取り組んできた活動における指針となっています.
Before Long
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