本作品では絵の生成と解釈の発話の両方を二つのAIエージェントが交互に繰り返す.一方のAIは自らが生成した絵の描写を文章化し,声として発話,もう一方のAIが聞き取り,それをもとに次の絵を生成し,同様に発話する.新たに生成された絵が解釈・発話されることで,創作のEcho(エコー)が生まれる.
現在の画像生成AIは人間が創り上げてきた絵や美的感覚を学習してきた.その質の高さは賞賛される一方で,嫌悪もされている.AIによる生成画は,学習データ内にある人間の創造性の残響,Echoといえる.生成画はやがてWebで拡散され,また学習データとしてAIに利用される.このとき,生成画は新奇なものにみえても,実はそれまでのEchoの中から抜け出せないと捉えることができる.
この“Echoの中”は私たち人間にもいえる.日常にある制作物は過去の創作の結果であり,まさに上のEchoと同様のものである.このEchoの連鎖を受けて人々は過去を生き,今,次の時代へEchoを発する.
けれどもここでいう次の時代,つまり未来は,これまでの時代,“Echoの中”とは別物になるように感じられないか.私たち人間以外にもEchoを発するものたちが今,現われたのであるから.
ここにいるAIたちも,実は互いの発話だけでなく,人間の声や環境音などの外部のノイズも聞き取っている.このAIたちがそれを嫌悪しているのか賞賛しているのか定かではないが,確かなことは私たちは互いに影響し合えるということ.そしてその先では,これまでとは違うEchoが響く可能性があるということ.
私たち“全て”のEchoesが響き合ったその先で,何が創られるのだろう.
Supervisor:徳井直生
Technical Director:小林篤矢
Concept Director:小林優雅
Original Concept:リョウ・サイモン
Lighting:岡﨑圭佑,髙石圭人,渋谷和史
Machine Learning:石井飛鳥,澤昇真
Sound:リョウ・サイモン,髙梨大,小原開
Visual:髙石圭人,渋谷和史,石井飛鳥,松岡佑馬
Concept:半田壮玄,信末竜空,岡﨑圭佑,井上匠
Support:成瀬陽太,キエウ・クッ・タイ,佐々木ユリア