《そよぎ またはエコー》は,毛利悠子が「札幌国際芸術祭 2017」の準備のために行なった,石狩川河口から上流へ,
会場となった札幌市立大学内の空中歩廊「スカイウェイ」(設計:清家清)の100メートルを超える細長く伸びた空間を活かし,鑑賞者は会場の端から端までを移動しながら,そこに配置されたさまざまなモノから発されるフィードバック音や電磁波,鈴の音の響き,街路灯の明滅,改造されたピアノによる自動演奏や,砂澤ビッキの詩の朗読の音声などを体験しました.鑑賞者の移動に伴って,空間内の音は,空間の中での音の伝達速度から生じる「音速のゆらぎ」によって変化していく様子を感じとることができました.
タイトルは,ヴァルター・ベンヤミンの「歴史の概念について(歴史哲学テーゼ)」に由来し,毛利は,私たちに,現在に残る過去からのメッセージを感じ,聴き取るために,耳を傾けることを促します.坂本龍一は本作のために楽曲を提供しました.本展では,その曲が自動演奏ピアノによって演奏されていた部分を中心に,《I/O》(2011–13),《Brush》(2017)といった毛利の作品とともに再構成したヴァージョンが展示されています.
《四つの風》へ向けた砂澤ビッキの詩
風よ
お前は四頭四脚の獣
お前は狂暴だけに
人間達はお前の中間のひとときを愛する
それを四季という
願はくば俺に最も
激しい風を全身にふきつけてくれ
風よお前は
四頭四脚なのだから
四脚の素敵な
ズボンを贈りたいと
思っている
そうして一度抱いてくれぬか
「札幌国際芸術祭 2017」の会期中に本作品展示会場で,坂本龍一とカミーユ・ノーメントによるパフォーマンスが行なわれ,フェリペ・マルティネスによって《After The Echo》として映像に記録されました.こちらはシアターでご覧いただくことができます.