ICC
ライト・[イン]サイト—拡張する光、変容する知覚
《optical flat》《optical flat》写真提供:国立国際美術館
《optical flat》*2000年
高谷史郎
直線に並んだ金属のシャフトに突き刺さるかのように上を向けて設置された二台の液晶ディスプレイ上に,テーパーのついたグラスファイバー製の拡大鏡が置かれている.ディスプレイには映像が高速度で出力され,その上のテーパーグラスファイバー**(視神経の束のような構造を持ち,形態も眼球を想起させる)を介し拡大または圧縮され,フラットかつシャープに表示される.記憶のメタファーとしての膨大な画像が,空間の直線性であらわされた時間軸における「現在」としてディスプレイ上で瞬間瞬間に高解像度で可視化され,観客は,あたかも記憶から機械の「眼」により出力される光学・視覚的な映像を受容する(映像を受容する「眼」の内側から見る,という逆転した図式)経験をする.このインスタレーションでは,映像を受容する「眼」を内側から見る.という逆転した図式が示唆されている.国立国際美術館収蔵作品.*「optical flat」:一般的には,光波の干渉を利用して光学レンズなどの平坦さを計測するために,光の波長の数十分の一までの精度でその表面を磨き上げたガラス製の計測機器を意味する.
**オプティカル・ファイバー・テーパー:上下のサイズが異なった形態をもつオブジェのようなもので,上下のピクセル数が同じであるため,オブジェの上下で映像サイズが拡張もしくは拡大されて伝達される特徴をもつ.
「ヴォイス・オン・LiS」にて,この出品作家のインタヴューをお楽しみいただけます.
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高谷史郎1963年生まれ.京都在住.1984年より京都を拠点とするアーティスト・グループ「ダムタイプ」に創設メンバーとして参加し,映像やインスタレーションを担当する.90年代後半よりディレクションに関わるかたわら,個人名での活動を開始,とりわけ写真や映像など,視覚装置や視覚のメカニズムをコンセプチュアルに可視化していく作品を発表,ソロでの作品に《frost frames》(1998),本展展示の《optical flat》,パフォーマンス《Die Helle Kammer(明るい部屋)》(ドイツ,2008)など.また中谷芙二子,坂本龍一をはじめコラボレーションも多く,近作に坂本龍一とのコラボレーションによるインスタレーション作品《LIFE - fluid, invisible, inaudible ...》(山口情報芸術センター委嘱作品,2007,同年ICCに巡回)がある.
http://dumbtype.com/過去に参加した展示・イヴェント