「オーラ・リサーチ」シリーズ《ニーチェが洗礼を受けた教会 》1997年
ニナ・フィッシャー&マロアン・エル・ザニ1930年代に旧ソ連の科学者キルリアン夫妻により発明されたキルリアン写真*によって,ドイツの歴史的人物がかつていたり,本人の失踪によって主をなくしながら現在も誰かによって維持されている部屋(いずれも,一種の空白状態にある空間)などを撮影することで,肉眼や通常の光学写真に見えないその人の痕跡(オーラ)を可視化させようとする「オーラ・リサーチ」シリーズ.この作品は,不可視のものを可視化するというコンセプトのもと,思考や精神的な放電も写真として記録できると考えていた19世紀以降の科学技術の歴史的側面やそこに存在したユートピア思想にあらためて光をあてるとともに,オルターナティヴなメディアを通した別の世界の見えを開示する.今回はその中から,ニーチェ**が洗礼を受けた教会の内部を撮影したキルリアン写真を,同じアングルから撮影した光学写真と並べて展示する.
*物体から放射される放電現象のようなものを,高電圧交流電流装置を使って写真にしたもの.最初の発見は,ニコラ・テスラとされている.
**ニーチェは1844年牧師の息子として生まれ,後に「神は死んだ」と宣言するなど,西洋文明を乗り越えようとする意志をもつに至った.「ヴォイス・オン・LiS」にて,この出品作家のインタヴューをお楽しみいただけます.* 英語のみ
|→ 詳細| ニナ・フィッシャー&マロアン・エル・ザニニナ・フィッシャー(1965年ドイツ,エムデン生まれ)とマロアン・エル・ザニ(1964年ドイツ,ドゥイスブルク生まれ),ベルリンおよび札幌在住.90年代前半より,廃墟や忘れ去られた場所や空間に漂う「ゴースト」的なものを題材に,その社会・歴史的な意味を探求していくプロジェクトを映画,写真,インスタレーション等など様々なメディアを通して展開.日本では90年代半ばより,東京都写真美術館をはじめ個展やグループ展,映画撮影や上映など多数.現在札幌市立大学准教授.
http://www.fischerelsani.net/