ICC
ライト・[イン]サイト—拡張する光、変容する知覚
《サンキュウ—インストゥルメント》《ヒロシマ-サンキュウ-インストゥルメント》1995
広島市現代美術館
撮影:大島邦夫
《サンキュウ—インストゥルメント》1995年
インゴ・ギュンター
暗い空間の中で発されるストロボ光を浴びることで,体験者のシルエットが壁面に一時的に焼き付けられる作品.人々が無邪気にシルエットと戯れ始めるという開放的な側面をもつとともに,1945年に広島に原爆が投下された直後の閃光,そして瞬時のうちに消えてしまった人々の残したシルエット(ヒロシマの影)を,観客に疑似的に体験させることが意図されている.タイトルは,ギュンターによれば,広島への原爆投下という惨劇があったことが抑止力として働き,冷戦下において核戦争の危機を回避することができたことを意味するという.「被爆50周年記念展 広島以後」(広島市現代美術館,1995)にて展示.本展では,1895年のレントゲンによる放射線の発見が,それ以降の社会にもたらした貢献や問題(X線写真,原爆,原発等)を振り返るとともに,とりわけ20世紀における光を考える上で,私たちが忘れてはならない原爆投下という事実をあらためて喚起する.
「ヴォイス・オン・LiS」にて,この出品作家のインタヴューをお楽しみいただけます.* 英語のみ
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インゴ・ギュンター1957年ドイツ,ハノーファー近郊生まれ,NY在住.1980年代後半より,当時一般的にアクセス不可能だった軍事機密地域や環境汚染地域の人工衛星画像を入手し,マスメディアに提供するジャーナリスト的な動きをアートとして展開.世界の経済や環境に関する様々な統計データを光る地球儀上に可視化した《ワールドプロセッサー》(1988),難民という存在を可能的なリソースと見なす《難民共和国》(1996)など,社会学的視点を取り入れた作品やプロジェクトを発表.日本では,P3 Art and Environmentでの3回の個展(1990年前後)など展覧会多数.
http://www.republik.com/ 過去に参加した展示・イヴェント