With: Don KENNY, Katherine ANASTASIA, EDA Kazuo
Producers: Gary HILL, Katherine ANASTASIA

異文化をみごとに統合した《URA ARU》では，回文による言葉遊び（頭から読んでも後ろから読んでも同じ単語あるいは句）を，基調となる日本の能楽の構造に調和させている．能は本質的な二重性の劇――とりわけ2つの場面として展開される神話的な物語のうちに2つの原理が，この世における現実と，あの世における結末とのあいだの繋がりを打ち立てる――のである．能を模して構成される一連の二重性の中で，ヒルは日本語の言葉を反転することによって喚情的な音をもった回文を作り出している．「hara／arah」は腹を心情に結び付け，「asu／usa」は明日と憂鬱とを対にし，「ema／ame」は供え物を雨に変える．「live／evil」のような，これに匹敵する英語が，その力を英国風なものにしている．ヒルは言葉を反転してその折り返しを解き放ち，《URA ARU》は，喚情的な一連の鏡像関係のうちに，このプロセスを相補的な領域の再生の儀式として描き出すものとなるのでる．

《URA ARU (the backside exists)》1985–86