In collaboration with Charles ATLAS, Merce Cunningham, and Shigeko KUBOTA
Part One: Blue Studio: Five Segments
1975-76, 15:38 min. By Merce CUNNINGHAM and Charles ATLAS
Part Two: Merce and Marcel
1978, 13:05 min. By Nam June PAIK and Shigeko KUBOTA

“テレビは人生における芸術を不透明にさせ，芸術における人生を不透明にさせる．我々は時間を逆行できるだろうか？ ”
パイクによる《Merce by Merce》は，前衛的な振付師マース・カニンガムと20世紀の巨匠マルセル・デュシャンへの二つのパートからなるトリビュートであり，パイクと共同制作者らはビデオを通して，芸術，人生，時間について問いかける．作品の中ではパイクの電子的な操作により，重なり合い変化した時空間が創出されている．

Part One: Blue Studio: Five Segments
《Blue Studio: Five Segments》は，ポストモダンの巨匠マース・カニンガムと，後に彼のレジデンス映像作家となるチャールズ・アトラスによるビデオダンスの画期的な作品である．ビデオ空間のために特別に振り付けられ演じられた短編のシリーズの中で，カニンガムは多重化され，オーバーレイされ，またスタジオから一連の予想外のランドスケープへと瞬間移動する．カニンガムの動作的なダンスは，ジョン・ケージやジャスパー・ジョーンズの声を含む分離的なオーディオ・コラージュに伴われて操作されている．

Part Two: Merce and Marcel
《Merce and Marcel》において，パイクと久保田成子は芸術と人生の関係について言及しながら，先駆的アーティストらに敬意を表する，細密にテクスチャー加工された超文化的コラージュを創り出す．パイクと久保田はアートを日々の動作やジェスチャーと関連付けてゆく．ニューヨークのストリートを走るタクシーの動きを上空から観察するシーンや赤ん坊が初めて歩きだすときの不安定な歩き方を見せて，”Is this dance（これはダンスだろうか）? ” と上部分に映す．ラッセル・コナーによるデュシャンの貴重なインタビューは，パイクによって高速のぎこちない再編集を施されている．パイクが “dance of time（時間のダンス）”と称する，機知に富んだ時間的レイヤー操作の中で，同じくコナーによるカニンガムへのインタビューが瞬間的に挿入され，デュシャンの先ほどのインタビューと重ね合わされる．”Time reversible ― Time irreversible（時間は元に戻せる ― 時間は元に戻せない）.”

《Merce by Merce by PAIK》1975–76/78