日時： 2005年11月26日（土）16時30分
会場： ICC 4F エントランス・ロビー

InterCommunication – ICC Report:
ここ数年メディア・アートに関わる専攻をもつ大学や教育機関が増加，作品制作と並行し，プロジェクトの実施を手がける新しい世代が育ちつつある．自ら複数の大学に関わっている立場から，ICCという公共の場において大学を超えたコラボレーションの契機として学生コンソーシウムを構想，実績を上げている5つの大学から各先生方に推薦いただいた5名の学生［★1］によりコミッティを結成し，プロジェクトの企画から実施までを見守った．

ここでは学生の自主性を重視，度重なるミーティングから，4階エントランス・ロビーという出入り自由な空間を生かし，利用者との対話に基づいた閲覧，参加，体験を通しその意味づけが再構成される「生きた（live!）」「自由な」「ライブラリ（lib-）」という独自のアーカイヴ・システムが発想された．デジタル化によって図書館や書物の意味やあり方が大きく変容しつつある現在を踏まえ，このプロジェクトでは，「ライブラリ」を常に新たなリンクにより意味が加えられ成長していくプロセス・ベースのものと見なしている．そのため「Lib-LIVE!」は，インスタレーション，データベース，トークやライヴ，印刷物など多様なかたちをとり，それぞれが連関することで多面的な「ライブラリ」の可能性を提案するものとなった．

インスタレーションでは，カーペットの上にランダムに置かれた立方型の本箱に，ジャンルを超えてさまざまな本やCDなど閲覧物が置かれ，来場者が自由に手にとることができる．これら閲覧物は，各分野で活躍するクリエーターたちによって選ばれたものである．閲覧物にはオリジナルの二次元バーコードがついており，テーブル上に置くことで，例えばその本を選んだ人の，それにまつわるインタヴューがテーブル上に再生される（本を傾けることで早送り，巻き戻しも可能）．本やCDというコンパクトな情報体が，個人的な解釈や体験へとリンクされることで，新たな情報の層を浮上させていく．空間は，整然と書架が並ぶ図書館とは異なり，来場者が本箱や本を任意の場所に移動させることで，能動的に新たな意味を生み出せる場となっている．また今後のライブラリに反映するために，来場者用アンケートが準備された．

会期中開催されたトーク「Lib-LIVE?」では，コミッティ・メンバーおよび筆者が学生コンソーシウムのいきさつや「Lib-LIVE!」への各自の関わりを語り，続いて同日夕刻に開催されたライヴ「Lib-LIVE! #001」では，各大学から新鋭サウンド・アーティスト［★2］を招聘，ハープや自作楽器，ソフトウェアやブレッドボードなど多彩なツールが駆使された．26日には東京藝術大学助教授の桂英史を迎えて「Lib-LIVE!」をめぐり図書館やデータベースの問題を広く検討，27日のライヴ「Lib-LIVE! #003」［★3］では山川冬樹など学外のアーティストも交え，広範囲の表現が試みられた．

このプロジェクトは，複数の大学から参加いただいたサポート・メンバーの他，数多くの人々の協力によって実現することができた．そのなかで人々の新たなネットワークが形成されたことを付記しておきたい．学生コンソーシウムそして「Lib-LIVE!」は，学生による自主的なプロジェクトとして今後も継続されていく予定である．［四方幸子］

［★1］IAMAS（情報科学芸術大学院大学）1年廣田ふみ，多摩美術大学4年渡邉朋也，東京藝術大学大学院2年小町谷圭，東京造形大学4年中村崇之，武蔵野美術大学院2年小柳淳嗣．
［★2］出演：auranoisazzzzz(‘&”}zz*+!=0)$#’&ΩΩzzzΩ，辻哲郎，The Breadboard Band，柳澤真梨奈，pico pico stomachs＋小野寺唯＋christophe charles
［★3］他の参加者として，すずえり，川染喜弘＋ツポールヌ（音がバンド名），谷口暁彦，Daito Manabe + Satoshi HORII

出典：『季刊 InterCommunication』No.56（NTT出版，2006）

アート＆テクノロジーの過去と未来トーク・イヴェント「Lib－LIVE! ♯002： 生きたライブラリ」

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