日程： 2005年12月6日（火） 19時
会場： ICC 4F 特設スペース

InterCommunication – ICC Report:
坂本龍一とカールステン・ニコライ、およびニコライの主宰するレーベル、raster-notonのアーティスト、byetoneことオラフ・ベンダー（彼はレーベルの共同主宰者でもある）、kangding ray、niboによるライヴ・パフォーマンス、「ic uc wc」は、同時期に坂本はコンサートツアー「PLAYING THE PIANO / 05」、ニコライは山口情報芸術センターでのインスタレーション「syn chron」のために来日中であることから発案されたイヴェントである。と、同時に、8月に当館で開催された、坂本のツアーメンバーであったFJOSSによる「The Record of the Record of the Time」同様に、ICCの活動に対するアーティストからのリアクションという側面も併せ持っている。

「ic uc wc」という、どこか暗号めいたイヴェント名は、坂本、ニコライ両氏より提案されたものであり、ICCの活動に参加するアーティストたちもまた、一般の観客同様に、ICCの活動を「注視」しなくてはいけない、（IC＝i see）という問題意識が込められたメッセージとなっている。こうしたアーティストからの積極的な働きかけによるイヴェント開催は、ICC活動の参加者からのフィードバックともいえる、より開かれた関係性に基づく施設運営につながるものとなるだろう。

坂本とニコライによるデュオは、これまでに『vrioon』と『insen』の2枚のCDがraster-notonよりリリースされており、先頃行なわれたヨーロッパ・ツアーに続いて、今秋には日本でも公演が行なわれるという。CDは、坂本のピアノと、ニコライのサイン・ウェーヴやピアノの変調によるものであったが、今回のライヴは、総勢5人が全員ラップトップを使用したセッションで、映像を担当するniboによるサウンドに同期したヴィジュアルが、2面にシンメトリーに投影された。パルスのループを基調として、そこに各人がさまざまな音のレイヤーを配していくような約50分にわたる演奏は、緩やかなパルスと変化する持続音による音の層を作り出し、アンビエント的な空間的な広がりを感じさせるものだった。またアンコールでは、性急なパルスによる3分間の非常にテンションの高い凝縮された演奏が行なわれた。

このような、アーティスト同士による自発的な試みは、CDや普段のツアーでは聴くことのできないものであり、より創造性へのベクトルをもった、いわば実験的なものでもある。それはアーティストからの要望によるものが大きく、今回のイヴェントは、ICCのような場所の特異性やその役割を考える上でも、今後のICCの活動にとって示唆に富むものであったといえよう。［畠中実］

出典：『季刊 InterCommunication』No.56（NTT出版、2006）

特別企画『ic uc wc』raster-noton + ryuichi sakamoto live