ICC

オープン・スペース 2012

《moids 2.2.1——創発する音響構造》
2009/12年
三原聡一郎+斉田一樹

展示期間:2012年10月23日(火)—2013年3月3日(日)


撮影:木奥恵三

複数のマイク,マイクロチップ,リレー(*)から構成されたデヴァイスが,無響室の天井,壁,床下といった,あらゆる箇所に配置されています.デヴァイスは,マイクが一定以上の音量を感知すると,リレーのスイッチが切り替わるよう設計されており,スイッチの切り替え時にリレー自体からかすかな動作音が発せられます.ひとつのデヴァイスがなにかの音に反応して音を発すると,またそれに反応してそのほかのデヴァイスも反応を始め,次々に反応が引き起こされます.反応の連鎖はしばらく増減をくり返し,時には飽和状態になり,時にはシステムがリセットされることで無音の状態に戻ります.

この作品は,テクノロジーによるもうひとつの自然環境を作り出すことを試みて制作されました.音環境に反応してデヴァイスが発する音が,また他のデヴァイスを反応させるというシンプルなルールによって,個々のデヴァイスの集合としての全体がさまざまなテクスチャーを持った状態に変化していきます.そこでは,森の中での昆虫や動物の反応にも似た有機的な音響環境が生まれ,その時々でまったく異なるものとして現われます.また,無響室という,音の反響のきわめて少ない環境に設置されることによって,音の聴こえてくる方向がより明確になり,全方位から聴こえてくる音に包まれるような感覚を引き起こします.

*リレー:電気信号の入力に伴い,電気回路の開閉(スイッチング)を行なう装置のこと.

協力:むぎばやしひろこ,平林慎

三原聡一郎 プロフィール

1980年生まれ.音響テクノロジーを基軸に,知覚,環境,身体の有機的な統合を模索するための,芸術作品としてのシステムの提示を行なう.音楽家の大友良英,美術家の毛利悠子らと作品を共同制作するなど,国内外でメディア・アートの分野にとどまらず,他分野とのコラボレーションを行なう.また,触覚研究者と触感表現のためのプロトタイピング・ツールを共同開発中.
過去に参加した展示・イヴェント

斉田一樹 プロフィール

1981年生まれ.電子楽器製作者,プログラマー.東北大学工学部電子工学科,情報科学芸術大学院大学卒業.在学中より,三原聡一郎らとmoidsの制作をはじめる.「ブレッドボードバンド」,「車輪」といった自作電子楽器製作・演奏ユニットとしても活動中.
過去に参加した展示・イヴェント

アーティスト・トーク 三原聡一郎+斉田一樹
日時:2013年1月13日(日)午後2時より[終了しました.]
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ポッドキャスト「チャンネルICC」にて,この出品作家のインタヴューをお楽しみいただけます.|→ 詳細|