ICC

オープン・スペース 2012

《生成と消滅 2012》
2012年
逢坂卓郎

撮影:木奥恵三

地球上に常に降り注いでいる宇宙線.この作品は,宇宙から飛来するエネルギーの存在を,発光ダイオード(LED)の明滅によって視覚化しています.展示室は半透明の膜に隔てられた240個のLEDプレートと8本のネオン管によって光で満たされていますが,センサーが宇宙線を検知したその瞬間,LEDプレートは静かに光を失います.そして,そこには丸いプレートのシルエットだけが影として浮かびあがります.時間の経過とともに光を失ったLEDプレートは,やがて宇宙線のエネルギーの値に応じて,再びその光を取り戻し,あたりをほのかに照らします.

宇宙線とは,宇宙空間を光に近い速度で飛びまわっている高エネルギーの粒子,放射線の総称で,目には見えませんが,1分間に約200個もの粒子が私たちの体を通りぬけていると言われています.宇宙線は太陽からやってくるもののほか,何万光年も遠く離れた超新星の爆発,つまり,星の死からも生まれているのです.

明滅を繰り返す静かな光は,私たちを宇宙規模の感覚の広がりへと誘い,宇宙や生命の誕生,そしてその消滅といった壮大な物語を私たちに語りかけているのかもしれません.

協力:日亜化学工業株式会社

逢坂卓郎 プロフィール

1948年東京生まれ.金属を用いた造形作品を発表していたが,やがて光を用いた作品に関心を持ち,放電現象を利用した作品によって注目を集める.近年では,宇宙線をセンサーで検知し,LEDの明滅に変換するインスタレーションをはじめ,宇宙をテーマにした作品を多く制作している.宇宙芸術の研究コミュニティbeyond [space+art+design]の代表で,2008年から国際宇宙ステーションでの芸術実験を実施.
過去に参加した展示・イヴェント

ICC×beyond合同企画 シンポジウム「芸術衛星フロンティア——2014年に打ち上がる二つの大学人工衛星」
日時:2012年9月23日(日)午後2時より[終了しました.]
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ポッドキャスト「チャンネルICC」にて,この出品作家のインタヴューをお楽しみいただけます.|→ 詳細|