ICC
アノニマス・ライフ 名を明かさない生命
《アエウム》 2009-12年
渡辺豪
photo
撮影:木奥恵三
Collection of the artist
Courtesy of ARATANIURANO
「フェイス」と題されたシリーズの作品は,コンピュータ・グラフィックスで作成されており,ひとりの人間の顔が,とてもリアルな質感を持って形作られています.そのため,この人間が本当に実在する人物なのか,あるいは実在しない人物なのか,わたしたちは判断を保留せざるをえません.作家は「人間を,どこをもって人間と認識するかに興味がある」というように,この虚像と実像のあいまいな境界は,わたしたちに奇妙な感覚をもたらします.
この展覧会では,1つの3D形体の顔と3つのテクスチュア(肌)が,微妙な差異をもって重ね合わせられたアニメーション作品を展示します.作品名の《アエウム》とは,ラテン語で「永代」(aveum)を意味します.それは超時間的な存在様態である神の永遠性と物質的な限界を持つ人間世界の有限性とを橋渡しする中間的な概念であり,変化を伴うが終わることのない不死の時間をさしています.
渡辺豪
1975年兵庫県生まれ.愛知県立芸術大学美術研究科油画専攻修了.
3Dコンピュータ・グラフィックスを使った,実写と見まごうばかりのハイパーリアルな写真作品や映像作品を発表し,国内外でめざましい活躍を見せている.ソウル国際メディアアート・ビエンナーレ(2006年)に参加するほか,主なグループ展として「カルペ・ディエム 花として今日を生きる」(豊田市美術館),「コズミック・トラベラーズ — 未知への旅」(エスパス ルイ・ヴィトン)などがある.
http://www.arataniurano.com/artists/watanabe_go/