ICC

《KAGE》
1997/2007
minim++
撮影:木奥惠三
円形に光のあたった床に,とげのような立体がいくつも並んでいます.この円錐状のオブジェには,天井からの光によって影が落ちているように見えます.しかし,円錐にふれるとその影は動きだし,日時計のように回転したり,伸び縮みしたりします.別な円錐にふれれば,全ての影が動き出したり,カラフルに色づいたりと,いろいろな反応をします.
この作品では,影をCGによって作り出し,あたかも実際の影であるかのように見せています.影というものは,光を完全に通してしまうもの以外のあらゆる物体に必ずできるものであり,言いかえれば,影とは存在しているということの証明であるということができるでしょう.しかし,影が実在することの証であるのに対して,影そのものには,モニターやスクリーンに映し出された映像と同じように実体はありません.影は影絵や幻灯機などの,映像および映像装置の原点でもありますが,この作品では鑑賞者が能動的に関与することで,影によるイマジネーションの世界が動きだします.CGによって作られた偽物の影と自分自身の本物の影が同じ平面上に投影されたとき,わたしたちは自分の影と自分の存在を再認識することになるでしょう.
minim++(ミニムプラプラ)は,近森基と久納鏡子の二人を中心にしたメディア・プロダクツ・ユニット.「日常の些細な事やモノに,ほんのひと工夫ふた工夫プラスして世の中に発信していく」ことをコンセプトに活動を行なっている.プロジェクトごとにアーティストやプログラマー,デザイナーなどが参加し,固定したメンバーによらないコラボレーションという活動形態をとっている.
インタラクティヴ
作品が,鑑賞者の関わることでその見え方を変化させたり,さまざまに反応したりすることは,計算速度の早いコンピュータや人間の身振りや環境の変化を感知するセンサーなどの発達によって,1990年以降大きな関心を集める動向になりました.作品は,体験する人によって違うものとして現れるため,鑑賞者の積極的な参加によってはじめて成立し,時間とともに変化し続け,一定の状態に留まらないのが特徴です.