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ピラネージ「古代ローマのカンポ・マルツィオ」(1762)
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「シグネチャーズ」敷地図
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僕は島という場所が好きではない.形状的にみれば海に浮いているようでいなが ら,少しも海に浮いていないからである.(考えてみればあたりまえのことではあ
るが.....) 海市というからには,あるいは海上都市というからには,都市は海に圧倒され,海 にもてあそばれるものであって欲しい.(磯崎さんが参照されたベネチアのよう
に)
そのために,ここでわれわれが提案するのは,陸の中にありながら海に浮かぶ建築 である. まず構造体の下部に溢れが誘導され,干満に応じて構造体が上下し,その上部に持
ち上げられたルーバー状のルーフがその形状と性状とを変化させるのである.ルー バーは形状の変化によって,その構成要素である粒子状のエレメントの間隔と角度
とが変化し,その性状が変化し,その下部の空間の光と湿度と気流とが変化するの である.
水に建築を浮かべるという試みは,実はわれわれが与えられた敷地である熱海の 「水/ガラス」において試みたものであるし,あるいは熱海という都市のすべての
建築は,温泉という一種のメディアに変換された海水によって,海に接続され,海 に圧倒され続けているのかもしれない. ルーフが干満によって変動する事に応じて,屋根の下の空間の形状,性状,アク
ティビティーも連続的に変化する.空間,形態の変化はネットを通じて参加する第 3者によってもたらされる以前に,海によってもたらされるべきであると,われわ
れは考えた. 海は建築家,あるいは人間よりももっと多様に強引に空間に対して介入するだけの 底力があると信じるからである.隈研吾
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