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カタログ
 
1997年4月19日 〜 7月13日 [終了しました.] ギャラリーA





中西泰人氏の手紙 3月12日付け


濱野 様,佐藤 様:

こんにちは,中西です.

>中西さん,初めまして.AALabの濱野と申します.
よろしくお願いいたします.

>それと中西さんにですが,途中参加の状態なので,出来ればもう少し具体的な
>プログラムの内容を教えて頂けませんでしょうか.

佐藤さんから,何か人工生命的なアプローチを使って欲しいというお話しでしたので,経済活動を行うマルチエージェント社会のシミュレーションを作ろうとしています.現在は自分の研究として人工社会の研究をしている訳ではないのですが遺伝的プログラミング(GP)を使った研究をしていますので,GPを使って経済活動を進化させようとしています.経済活動はCobwebモデルと呼ばれるモデルを使おうと思っています.このモデルでは,抽象的な作物の値段を過去の値段の履歴から推測します.その推測した値段に基づいて生産量を決めます.作物を市場に出し,他の人間たちの作物の量の総和によって値段が決まり,その期の利益が決定されます.この作業を繰り返します.

>1)アルゴリズム自体

この活動の中で,どのように値段を推測するか?というプログラムをGPによって進化させようとしています.どのエージェントが生き残るか?といったグローバルなアルゴリズムは事前に決定して,変更することはしません.

あとはエージェント同士のコミュニケーションをどのようなものにするか?環境などへの影響や何らかの制約条件などを取り入れるべきかどうか?ということを考えつつ,プログラムを作成しています.

>2)アルゴリズムを適用するさいのパラメータの与え方
>インターラクションを考えると2)の項目を上手く取り込み,動的に変化させる仕掛

ユーザには新しいエージェントを社会の中に付け加えてもらう,という形でインタラクトしてもらおうと思っています.今の所,Javaを使って書いているのですが,サーバで走らせるGPの負荷が大きいと思いますので,リアルタイムのクライアントサーバプログラムにするとさらに負荷が掛かりますし,プログラムを書くのも一段面倒がかかるのでユーザが作ったパラメータをパケットで送信してもらう形にしようと思っています.

>3)アルゴリズム自体の,あるいは生成されたパターンの解釈
>けを考えている最中です.3)については逆に多義性を含むかたちが理想です.

今の所,各エージェントに都市の中に固有の場所を与えるべきかどうかを考えているところです.

場所を与えない場合は,生成されたパターンはトポロジカルなネットワークですので,形態は一意には決まりませんから多義的であると言えます.しかし,空間性を排除しているので,現実の都市のシミュレーションとは言えないとされるだろうとは思っていますが,WWWであまり空間に囚われたものを作りあげるというのも何かと感じています.ネットワークとしての無向グラフを2次元的に描画するAppletはSunのJavaのサンプルとしても入っているので,それを流用しようと思っています.

場所を与える場合は,どのような相手とコミュニケーションを行うかということを座標的に制限することにすると思います.空間的な要素が大きくなりますので,かなりプリミティブではありますが都市のシミュレーションになるかと思っています.

しかし,いずれせよGPで走らせることのできる人口は数百から数千のオーダーになりますので,浜野さんの作られたシミュレーションのように,とても街らしいものが出来上がってくることは,きついと思っています.
都市や街区の「形態」に重きを置くのであれば,セルオートマトンのように空間的な相互作用からシミュレーションを行うほうが正当なアプローチだと思います.ただ磯崎先生が「inter-」ということに興味を持たれていて経済や社会といったものを含めた都市をWWW上で語るのであれば,僕はあまり空間にこだわらないものを作りたいと思いました.最後には模型になるものを作らないといけないので,当然2次元的なものに落とす作業は入る訳ですが‥.

佐藤さんからは,このまま続行して構わないということですが,いざ出来てみて「こんなのじゃ駄目だ」というのを今一番恐れていますので(笑) ご都合があえば,一度直接お話ししたいと思っています.

では.

中西 泰人
http://woodstock.t.u-tokyo.ac.jp/~naka/Nakanishi-j.html