昭和21年(1946年),終戦直後の日本では,貨幣を製造するための材料が不足していたため,戦時中の薬莢(やっきょう)などのスクラップを材料として50銭銅貨が製造されていたそうです.久保ガエタンは,そのような,あるものが別のものへと作り替えられ,生まれ変わったりするような,さまざまなものや出来事の来歴や因果関係に関心を持ち,それをさらに自身の作品として,再創造へとつなげていきます.先の50銭銅貨は,それをまた溶かして銃弾の形に鋳造し直し,元の形に戻されています.また,戦車を材料としている東京タワーから剥げ落ちた塗膜を砕いて顔料にし,それで描いたドローイング。久保の母の出身地であるボルドーで建造された戦艦が材料となったという浅草火力発電所から派生し,昭和39年(1964年)に取り壊された千住火力発電所,通称「お化け煙突」を削って作られた陶器など.
この展示は,歴史的な題材への入念な調査にもとづき,廃品を利用したオブジェ,模型,ドキュメント映像,写真,ダイアグラムなど,調査の過程で見出された事実や出来事から派生するさまざまな作品によって構成されています.新作である,曾祖父が日本海軍の駆逐艦の乗員だったことを発端に,その軍艦が戦後,海上自衛隊の護衛艦として再生したという事実にまつわる戦後の兵器の解体史を,証言とともに映像作品にし,それをもとに,その背後にある隠された連関を導き出します.