《Interactive Plant Growing》では,スクリーンの前に鉢植えのシダやサボテンなど5種類の実際の植物が置かれ,観客が手を触れるとそれに反応して仮想植物がスクリーン上でリアルタイムに成長し,繁茂する.画面の植物の成長は,手を触れる人間との相互作用によって植物が生じさせる微妙な電気的変化によるが,つねに一定の反応が起こるわけではなく,植物と人間の状態や気分によって違った変化が起こる.実際の植物をインターフェイス・デヴァイスとしたこの作品は,人間の行為に対する植物の反応を信号として取り込むことで,インタラクティヴィティに新しい視点を導入したものである.《A-Volve》では,観客がタッチ・スクリーン上に描いた形をもとに仮想生物が創造され,リアルタイムに生成される三次元のグラフィックスとして水のはられたプールに投影される.この仮想生物は水中で観客の手の動きや行動に対して敏感に反応する.生物同士は新しい生命を誕生させる一方で,生存競争も行なうなど,遺伝や進化と淘汰の法則を組み込んだ一つの人工生命環境がつくりだされている.ICCの「アーティスト・イン・レジデンス」プログラムとして,京都のATR人間情報通信研究所に3カ月滞在し,人工生命の研究をしているトム・レイ博士(生物学)との共同研究を行なった成果として発表された.
『ICCコンセプト・ブック』(NTT出版,1997)より引用