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NTT インターコミュニケーション’92「脱着するリアリティ」

1992年3月28日(土)—4月16日(木)

概要

建築家の入江経一とコンピュータ・アーティストの藤幡正樹の共同制作による,電子情報化時代を模索する新感覚のインスタレーション.
もともと芸術とは「見えない現実を見えるようにする」という不可能事を覗く行為であるが,このインスタレーションは,「リアリティの捉え方」がメディア・テクノロジーの進歩により大きな曲がり角を迎えている時代に,「あたりまえでありそうなことをひっくり返すこと」により,この「見えないリアリティ」を新たな感覚として予感させようと試みるものであった.
入場の際,全員が装着する赤外線ヘッドホンは,会場内の20種類以上のさまざまな音のプログラムを受信する.鑑賞者は,歩くポイントにより異なった音やメッセージを耳にしながら,会場内を自由に回遊することになる.つまり,空間から空間へと移動しながら,鑑賞者は無自覚のうちに,自ら情報を選択していることになる.
最初の「エントランス・ゾーン」では,三つの円柱状のウレタンフォーム製のエントランス・コラムから人が入場するたび,これに反応して「逆円錐装置のゾーン」のスクリーン映像が切り替わる仕組みになっている.
第二の「ガラス装置のゾーン」は左右の傾斜した強化ガラスの通路で,この空間は15のチャンネルの音で構成される.立体音響効果による効果音をはじめとする音のメッセージが,鑑賞者それぞれがどこを歩くかにより,違ったプログラムとなって耳に届く.
第三の「逆円錐装置のゾーン」は,巨大なすり鉢状の構造物からなり,ここでは2種の映像による非日常的な体験をすることになる.一つは,エントランス・コラムを真上から部分的に拡大して捉えた映像で,鑑賞者はどこかで見た映像と音が空間と融合していく不思議な体験をする.そのライヴ映像に連動して,もう一つのCG映像が動作する.CGには,スパイラル(会場)の空間と入江・藤幡両氏が球体に映し込まれており,鑑賞者は視覚,聴覚,触覚がバラバラに分離された体験をすることができる.
鑑賞者がインスタレーションを自ら体験することによって,それぞれが感じとる未知のリアリティは,いわば,アーティストと鑑賞者のつくりあげるオリジナル・コラボレーションと言える.
最後の空間,「エグジット・ゾーン」はバンザイをした人型にくりぬかれた壁面で,ここを抜けた後,鑑賞者はヘッドホンを取り去り,インスタレーションで獲得した未知のリアリティの世界から現実の世界へと戻っていく.
このインスタレーションは,高度化し,複雑化するメディア・テクノロジー時代の新しいリアリティを探す大きな手掛りを提示するものとなった.

『ICCコンセプト・ブック』(NTT出版,1997)より引用


会期:1992年3月28日(土)—4月16日(木)
会場:スパイラル

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