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《東京仕草—娘のセリフ—》 [2021/2023] “Tokyo Shigusa: Daughter’s lines”

津田道子

作品解説

六畳の和室二間を模した空間が展示室内に設えられています.そのところどころに立てられた襖や障子らしきものには,すり足で歩いたり正座したりなど,和室空間のなかで行なう典型的な振る舞いをとらえた映像が投影されています.
《東京仕草》は,映画『東京物語』(1953)に代表される小津安二郎監督作品に登場する女性の仕草に着目し,制作された映像インスタレーション作品です.映画中の女性の動作を抽出して,撮影セットを概念化した空間やイラストレーション,映像などによって構成しています.

人は,ものと自分の身体との距離を測りながら動き方を調整するので,本作品のなかに身を置くと,意図せず映像と同じように動いてしまうことがあるかもしれません.しかし人の振る舞いを決めるのは,そういった物理的な位置関係や環境条件だけではありません.行為者の文化的背景も大きく影響しますし,生活空間では,どのような道具で家事を行なうかによって,振る舞いは大きく変わってきます.私たちをとりまく空間をそのように実現させている,これまでの技術の歴史の蓄積すべてが,私たちの仕草や振る舞いに反映されているのです.

近代以降,テクノロジーの発展とともに生活様式は劇的に変化していきました.現在も親しまれる戦後の小津映画の数々が制作されたのは,その変化がさらに加速した高度経済成長期の初期,現代の私たちの生活にもぎりぎりそのエッセンスを見出すことができる時期にあたります.本作品では,当時の家事の主な担い手であり続けてきた女性の所作に着目することで,過去から現在,そして未来へと向かう文脈を鑑賞者に想像させます.


セリフ出典:
『晩春』(1949),『麦秋』(1951),『東京物語』(1953)
すべて脚本:野田高梧,小津安二郎

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