旧式の録音再生装置であるオープンリール式のテープレコーダーが高い台の上に横向きに置かれ，片方にだけ取り付けられたリールが回転すると，巻きとられていた磁気テープが記録された音を再生しながら落ちていきます．テープは，台の前面に取り付けられた薄い透明なアクリル容器の中へと落ちていき，容器の底から段々に折り重なりながら溜まっていき，容器の中に織り込まれていきます．それは，どこか織物や絵画のような模様を描き，容器に溜まると今度は高速で巻き上げられていきます．

この作品で使用されているオープンリール式のテープレコーダーは，すでに引退したテクノロジーと言ってよいでしょう．それは小型のカセット・テープになり，現在では音楽はハードディスクに記録されるようになりました．和田は，可能性を使い果たしてしまったかのように見える旧式のテクノロジーに再び可能性を見いだし，再利用することによって作品を制作します．それを現代のテクノロジーと組み合わせながら改造することで，もともとの用途から離れた，新たな装置として再生させています．

いろいろな装置の歴史をさかのぼりながら，装置自体がもっていた能力を再発見し，ありえたかもしれない可能性を考察することは，メディア・アートの中に顕著に見られる傾向でもあります．