私たちが見ているのはひとつの世界でしょうか? この作品では,道具や日用品で作られた回転するモビールの実物の世界,ラジオとモーターの関係から現れる電磁場の世界,ライトで照らされた光とかげの世界,という3つの世界が重なり合ってできている作品です.モビールの動きによってラジオの音が聞こえ,モビールの動きと光でそのかげが変化します.私たちの生きている世界はいつでも,いくつかの重なり合う世界で作られていることがわかります.
すずえりは,自作装置を介して既存のものを組み合わせたり,いじったりするライヴ・パフォーマンスや作品制作を行なっています.道具をあつかう演者と道具そのものとのずれや,またそれを見る人との相関関係を気にして即興演奏を行なったり,インスタレーションを制作しています.
今回の作品のタイトルは,M・C・エッシャーのリトグラフ《Three Worlds》(1955)に由来し,知覚できる世界と知覚できない世界が入れ子になった3つの世界を,回転するモビールと観客がいる物理世界,推進力となるモーターとAMラジオの発振による電磁場の世界,モビールにぶらさげられた道具や日用品とライトによる光と影,の3つで描いています.それぞれの世界が影響を与えながらある種の調和が生み出されていきます.