ICCギャラリーとスパイラルをISDN回線で結び,離れた2会場の映像をテレビ会議システムを使って双方の会場に送る.自分の姿は別の会場の他人が写ったモニターのなかに映し出され,身振りによって相手とコミュニケーションしているうちに,自分が現実の空間と時間の外に存在しているという複雑な心理的状況を体験する.つまり,ここで動いている自分の身体ではなく,遠方のテレマティック空間でインタラクションしている身体だけが意識されるようになる.作品のなかで使用された「ベッド」や「ソファ」のもつ豊かな含意によって,この感覚転換は効果的に強化され,リアルな感触が引き起こされる.11月3日—5日には,ポール・サーマンとアンドレア・ザップによるパフォーマンスが行なわれた.
『ICCコンセプト・ブック』(NTT出版,1997)より引用