通常,人間の知覚には限界があり,私たちは身体に比べて極端に大きなものや小さなものを,感じることはできません.そのため,人間は多くの道具や理論を用いて,異なるサイズの自然を観測し理解してきました.
この研究は,そういった取り組みの中でも特に,日常的な環境の中に存在する小さなもの,肉眼ではその詳細を知ることができない微細な構造を可視化して,その存在を実感させることに注目しています.きわめて小さいために,日常ではほとんど意識されることのない種類の昆虫が,人間の身体のサイズに引き伸ばされると,異様な存在感をもち始めます.このような微細な構造の存在感(マイクロ・プレゼンス)を顕在化させるために,この作品では最新のデジタル画像処理技術を駆使して,昆虫のすべての部位にピントを合わせるという新しい写真の技法を開発しています.
小檜山賢二+森田正彦+齋藤達也+上村周平
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス 小檜山研究室