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ICC コレクション

《インスタレーション OR》 [1997] “Installation OR”

ダムタイプ

《インスタレーション OR》

作品解説

白いカーペットの上に設置された4枚の細長いガラス板.その表面に男女の映像が投影されています.ガラスとカーペットがその像をブレさせます.非物質的な映像と物質的な音響.センサーが鑑賞者の存在を感知すると,横たわったままの男女の映像に変化が起こります.生と死の間のゾーンに横たわる「グレイ・ユーモア」の考察.

アーティスト

展示情報

関連情報

作家の言葉

new work (no title)
Explaining the issue around the border of life and death.
And how technology is involved in to distinct this border now.
Idea came up from my experiences in the hospital when my mother (cancer) died in August, and my brother (traffic accident), my lover (AIDS) in the past.
How much the science can control this border.
How much our mind can control this border.
This is the border which all the humans have to confront some day.

teiji furuhashi oct. 1995

《OR》は,生と死との間のゾーンに横たわる「グレイ・ユーモア」の考察で,パフォーマンスとインスレーションによって展開される.

〈死〉自体を経験的には見ることは出来ない.超越論的なまなざしを通して知るだけである.
医者(科学)のまなざし……視線を可能にする視線.
しかし,本当だろうか? 可能にする?
「……を可能にする」という約束.しかし,そのような約束は,可能性を不可能性にすり替える.
だから,我々は約束よりも遅れてしまう,あるいは待たされる.のではなかったのか.
リアルタイムに生きているという不安が,死を名指さざるをえないものにする.
死を騙す方法/死の現場—不在—証明(アリバイ)
非現実的な時代(アンリアルタイム)において絶望的な状況下で「コントロール可能か?」と問うこと.

OR installation
白いカーペットの上に4枚の細長いガラスが等間隔に置かれ,そのガラスはON/OFFによって遮断/透過する液晶フィルムが挟まれている.

ガラスとカーペットは,映像をブレ(ぼやけ/しみ)させ,音響を遮断(反射/吸収)する.

奥行きのない平面的展開によって成立する映像—表示—空間.それは,無限のグリッド上に配置された「ベッド」のある仮想空間内でスキャニング=ソーティングすることで顕在化されるエリアである.

そこでは,コンピュータ制御によるレーザー・ディスク・システムが,ビデオ・プロジェクターによって7人の男女の映像を4つのガラス=ベッドにマッピング(写像・変換)していく.

しかし,代入されるデータは,撮影の段階では,いくつかの可能性の中から唯一の選択として現実化され,残りは非現実的なものとして削除されたものでありながら,投影の段階では,プログラムによって潜在的なプロセスの中から一つのサンプルとして顕在化されたものとなる.

こうした非物質的な映像に対して,イメージを欠いた物質的な無指向性の音響が,抑制され/控えめな音響——空間を形成する.この空間を自由に動き回るとき観客は音響——体験によって偏在化させられる.

しかし,観客の介入によってセンサーが作動すると平面はわずかなズレ,モーションが起こり,超指向性の音響によって局所/空虚となる.

(ダムタイプ)

作家紹介

ダムタイプは,1984年の結成以来,芸術表現の可能性を直接的にそしてアイロニカルに拡張しつづけている.メンバーの複数性,媒体の多様性,その活動の複雑性の中から高度に集結される美学は,洗練された繊細なセンサーとなってプロジェクトをつくりあげる.そして彼らの作品のつねとしている「ワーク・イン・プログレス(進行中の作品)」という手法によって,人類のつくりあげたメディアの多様性をさまざまな形で横断しながら,総合的メディアである「身体」と直面し,愛という「不可視のコミュニケーション」をも提示しようとしているのである.

ダムタイプが,現在のダムタイプにいたる形態とテーマを凝集しているのが88年に初演された《Pleasure Life》である.すべてのことが,メディアに媒介されない限り成り立たないとするこのパフォーマンスは,現代の文明としての生活の断面を演じ,メディア,情報,身体,秩序といったものの行方を捉え,その後の彼らの活動思想の基盤となっていった.そして80年代的ポスト消費社会をシニカルにシミュレートしたのが,90年にパフォーマンスが初演された《pH》である.コンピュータによって制御された巨大なトラスが,一定の周期で舞台をスライドする.パフォーマーの身体を脅かしつづけるその様子は,テクノロジーが人類にとって必ずしも有効ではないという事実をわれわれに突きつけた.《pH》は,インスタレーション,ヴィデオ,印刷物を媒体としたマルチメディア・プロジェクトとなる.

そして92年秋,メンバーの中心的存在であった古橋悌二が,自身によってHIV+(ポジティヴ)であるという現実をメンバーに伝えることでダムタイプは新たな展開を向かえる.それまでも,新しい概念の「アート・センター」として,アート関係の情報収集,サポート,セミナー,ワークショップやサロンとしてのカフェの運営などをアクティヴに行なっていたが,それを期にエイズや同性愛などをめぐる諸問題を社会に対して積極的に発信していくようになる.そして93年の《S/Nのためのセミナー・ショー》という実験的な試みによって,その方向は決定づけられていく.《S/N》は,きわめて多元的な構造をもったマルチメディア作品である.ジェンダー,ホモセクシャリティ,人種,国籍といった,いわば押しつけられたアイデンティティを逆手に取り,それをアイロニーとユーモアをもって語っている.パフォーマンス,インスタレーション,書籍,CD,インターネットといった多様なメディアで展開されてきたこのプロジェクトは,あらゆるマイノリティ,用意されたアイディンティティ,そしてその周辺のさまざまな社会活動とその意識を表出させている.

ダムタイプは,95年10月,《S/N》のブラジル公演中に古橋悌二を亡くした.新しいプロジェクト《OR》のプランは,古橋の生前の94年から進行されていた.《S/N》によって描かれたコミュニケーションのかたち,超越したボーダーをどのように捉えるのか.彼らはつねに「芸術は可能か」と問いかけている.そして彼らの作品はつねにワーク・イン・プログレスである.

(小島陽子)

クレジット

conception: dumb type
visual direction: 高谷史郎
sound: 池田亮司
compiler:泊博雅
subject: 石橋健次郎,大内聖子,川口隆夫,砂山典子,高嶺格,田中真由美,藪内美佐子,アルフレッド・バーンバウム

作品一覧