リー・イーファンは,映像作品制作のために独自のソフトウェア・ツールを自身で開発するなど,DIY的な制作を行なうアーティストです.作品の制作プロセスを「アーティストとソフトウェアの死闘を演出すること」だとするリーは,デジタル映像業界で使用される,高解像度な3Dアニメーションをリアルタイムで即興的に制作できるゲームエンジンを使用しています.
本展覧会に出品されている二作品は,現代のCGによる映像制作技術について解説するレクチャーの体裁をとりながら,CGで作られた映像内の時間と空間について,その現実との奇妙な異同や,複雑化する技術ツールによって扇動されるユーザの欲望についてなどを考察しています.そこには,物理的な制約なしに動くことができる,独特のブラックユーモアとエキセントリックなキャラクターを持ったアヴァターが語り部として登場し,人間,テクノロジー,映像の現代的な関係を問い直します.画像はコミュニケーションの方法をどのように変えたのか,絵文字はどのようにして自分の感覚を超えた感情的な内容を伝えることができるのかなど,画像制作のために設計されたソフトウェア・ツールから生じる社会的,倫理的な問題と格闘するアーティストが描かれています.
コンピュータによって制作される仮想空間と,そこに没入するためのデヴァイスは,ヴァーチュアルなデジタル環境に入り,操作する方法を提供するだけではなく,デジタル・テクノロジーを使用した画像制作の形而上学的実践を考案するためにも使用されているのです.
サウンド・デザイン:ホン・ヅーニー(洪梓倪)
日本語字幕翻訳:岩切澪
協力:東京都写真美術館/恵比寿映像祭
リー・イーファン《忘れられない形》(2023)を,4階のシアターにて上映しています.
TOTAL TIME: 16:07