本作品において,タナチャイ・バンダーサックは,ディゾルヴとスーパーインポーズを用いた映像にアンビエント・サウンドを組み合わせ,ラオスの都市サムヌア近郊にあるヒンタンの立石を表現しようとしています.立石をとりまく空間に,運動と振動が現われては消えていきます.このプロセスは,いまは活気のない遺跡の一帯に散在する立石に備わる霊的機能――生と死のあいだにいるアンデッドや人間以外の存在が支配する領域とのあいだに境界線を引く力——を想起させます.本作品において映像は,立石をとりまく生態系に存在する不可視だけでなく未知のものとコミュニケーションする新たな可能性を開くために不可欠なテクノロジーとなっています.
《セントラル・リージョン》 [2019]
タナチャイ・バンダーサック