東京都内のとある建物に,暗い部屋がありました.入ってみると,そこには古い道具が置いてありました.おそるおそる照らしてみると,その影はぎょろりと大きな目を見開き,べろを出して,にやにやと笑っています.
「やあ.やっと会えたね.」
「忘れたとは言わせないよ.」
道具たちが話しかけてたので,驚きました.しかし,全く身に覚えがありません.
傘は言いました.
「雨が上がった途端に,邪魔になった僕を捨てて帰ったよね.覚えてるかい.まだまだ使えたのに.」
提灯は言いました.
「僕は君の家の近くの公民館にあったんだ.君が穴を開けて使い物にならなくなってしまったんだよ.」
その時僕は,今までたくさんの物を壊したり,無くしたりしてきたことに初めて気付きました.
本作は,針穴が空いた黒ケント紙と偏光フィルムを組み合わせて作られた物体を点光源で照射すると,物体とは異なる影が現れる.それは影であると同時に,像でもある.彼らの体はどこにあるのだろう.