IT革命の本質とITベンチャーへの期待
――日本の選択/ビジネス・モデル特許/地球温暖化

ITベンチャーへの期待

武邑──今後日本の「コンテント・ビジネス」を主に担うと期待されているのがITベンチャーだと思いますが,一方で日本ではベンチャーが育たないとも言われています.その点どうでしょうか?

月尾──現状の日本のITベンチャーは,明治の初期に日本政府が中心となって推進したように,外国の制度や手段を導入することで成功している段階だと思います.例えば「楽天」[★5]も,インターネット・モールという米国に以前から存在していたビジネスを日本に導入して成功した.明治時代に鉄鋼生産の技術や法律や軍隊の制度を外国から導入したのと似ています.

現時点では早く導入したからアドヴァンテージがあるけれども,成熟してくればそれほど優位ではなくなります.そのときインターネット・モールで何を提供できるかということが,結局,次の競争になっていくと思います.インターネット・オークションでも同様です.自動車も書籍も買い飽きたときに,インターネット・オークションという仕組みを使って何が提供できるかが勝負になってくる.そうすれば必然的に,文化とか環境とか,地域固有,民族固有,制度固有のものに価値が出てくると思います.

だから私は米国の覇権的な動きに対して悲観的になる必要はないと思っています.制度や仕組みはいくらでも米国から導入してもいいのです.その仕組みの上で提供できるものが固有のものであり,世界から評価されるようなものを過去から発見できたり未来に創造できれば,日本の役割もあるし成功もあると考えています.ただ問題はその「視点」がどれだけ入れられるかということです.つまり鉄鋼を生産するだけでなく,鉄鋼を使って何を作るかという部分がこれから問われていくので,そこを次代のITベンチャーの人たちが意識すれば十分にチャンスはあると思います.


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