InterCommunication No.16 1996

InterCity KWANGJU


「民主の地」での国際美術展――光州ビエンナーレ 3/5

界を7ブロックに分けてそれぞれコミッショナーを立てる方式で,95作品ほどのうち西欧やアメリカからの出品はその三分の一に満たない.久野利博,清野祥一,平林薫の3作家が選ばれた日本は多いほうだ.韓国の作家が最も多いのは当然だが,世界中からほぼ均等に選び出された作品が(間仕切りはあるが)林立する一種バザール的な構成は,ヴェネツィアやドクメンタとはまったく違う現代美術の断面を示していた.荒川修作の《養老天命反転地》やヴェネツィアで話題になった「トランスカルチャー」展などを見ても,最近の現代美術における非西欧的エネルギーは爆発的な力を感じさせる.そうしたエネルギーを集約し,新たな視点から文化的伝統を問い直すことができるのは,むしろ辺境(border)にあってこそなのではないか.そういえばオープン直後の会場にお年寄りの団体客が多いのは,お祭りといえばまず年老いた両親を送り出す親孝行の美風のためだと教えられたが,これも現代美術展としては異色の光景に違いない.
別展の中でも特に注目された「インフォアート」もまた,体制や権威の外にあって芸術表現が持ち得る鋭さを検証していた.
度限りのテーマ展として企画された特別展の中で,ナムジュン・パイクとシンシア・グッドマンのディレクションによる「インフォアート」は,その規模,話題性ともに別格で,現地の新聞でも本展以上の評価を得ていた.数字の話の好きなパイクらしく,ビエンナーレの予算の15%をくれれば30%の注目を保証するといって企画を取ったのだ,と言っていたが,その公約は十二分に果たしたというべきだろう.グッドマンはアメリカの美術館が初めてCGを本格的に展示した「Digital Vision」展のキュレーターで,美術界からデジタル・アートにアプローチした最初の一人である.パイクが選んだメディア・アートのパイオニアたちの作品と,グッドマンが選び出したインタラクティヴ・アート,そして韓国のキム・ホンヒが選んだ韓国のアーティストたちの作品の組み合わせを中心に,バーバラ・ロンドンがまとめたビデオ・アートの上映プログラムを加えて構成されたこの展示は,ビデオ・アートからヴァーチュアル・リアリティに至るインフォアートの歴史と最先端を見せようという試みである.興味深いことに,この「歴史」からは,グッドマンが(理由は述べずに)カタログに書いている通り,80年代のコンピュータ・アートがすっぽり抜け落ちている.


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