InterCommunication No.16 1996

InterCity KWANGJU


「民主の地」での国際美術展――光州ビエンナーレ 5/5

はいえ最終的に選ばれた作家のリストには,それなりの意味があるに違いない.さきの疑問に戻ろう.なぜ,ビデオ・アートからいきなりインタラクティヴ・アートへ飛ぶのか? それは,「インフォアート」展はテクニカルな定義によるものではなく,アートの意味,作品と観客の関係に関わるものだからである.パイクらのフルクサスが目指した新しいアートの理念,つまり既成のアートの解体は,ビデオからコンピュータという技術の流れによって継承されたのではなく,それぞれの技術の使い方によって継承され,さらに新しい段階へと進みつつある,というのがパイクとグッドマンの提示したコンセプトであろう.だから,リニアーで一方通行のビデオ・アートやコンピュータ・アニメーションはここには登場しない.
うして見れば,なぜ「インフォアート」が光州ビエンナーレ特別展として出現したのかがわかる.「権威主義が自ら招いた孤立と観念をのり越え,自由奔放な時代の前線へと向かわなければならず,大衆の共感と支持を得るために新しい地を開拓しなければならない…….このために先端科学と伝統の協力を模索し,自由と想像力を土台に新しい時代精神を築き上げていく」(光州ビエンナーレ宣言文より)作業は,パイクらの試みを経て現代のインタラクティヴ・アートに引き継がれているのである.ビデオ画像を「撮る」ものから「つくる」ものへと変え,芸術を画廊の壁から解放し,衛星通信を通じて人と人との連帯をネットワークしたパイクの軌跡は,光州という場において現代テクノロジーへの引き継ぎを表明したのではないだろうか.


(くさはら まちこ・CGアート)

[光州ビエンナーレは1995年9月20日から11月20日まで韓国光州広域市で開催された]


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