本サイトをご利用の際,最新版のFirefoxGoogle ChromeInternet ExplorerSafariなどを推奨しております.
現在ご利用のブラウザでは,レイアウトなどが崩れる可能性があります.

JA / EN

チャンネルICC

ブログ

現在進行形のプロジェクト, これまでの活動など,ICCに関するトピックを紹介していきます.

戻る

コンテンツ紹介

チャンネルICC デイヴィッド・ボウエン インタヴュー

2012年2月14日 15:00

bowen_podcast.jpg

ICCのポッドキャスト・サーヴィス「チャンネルICC」で,「オープン・スペース 2011」にて三作品を展示しているデイヴィッド・ボウエンさんのインタヴューを公開しました.今回は,インタヴュー内容の抄訳をご紹介します.


アーティストのデイヴィッド・ボウエンです.教育者でもあり,ミネソタ・ダルース大学では准教授としてロボティクスと彫刻を教えています.
 現在「オープン・スペース 2011」で展示しているのは,《テレプレゼント・ウォーター》,《フォトトロピック・ドローイング・デヴァイス》,そして《ソナー・ドローイング・デヴァイス》の三作品です.


《テレプレゼント・ウォーター》は機械でできた波の構造物で,太平洋に浮かぶブイからダウンロードしたデータを利用しています.そのブイは元々ハワイから400kmほど離れた海上に係留されていたのですが,昨年4月に係留が解けてしまいました.現在もブイは漂流したまま,データを送信しつづけています.この作品では,ブイが収集しているデータのなかから,波の高さと波の周期の情報を利用して,太平洋上の海面の動きを再構成しています.


《フォトトロピック・ドローイング・デヴァイス》は,光に反応して動く小さなロボットです.このロボットは,自分が検知したもっとも強い光に向かって自分の進む方向を決めるようプログラムされています.また,このロボットはソーラー駆動で,自分で集めた光のエネルギーを使って動きます.ですから,いろいろな意味でこのデヴァイスは,自分のエサを探し求めている生き物だといえます.
 デヴァイスには小さな木炭がついていて,デヴァイスが動くと木炭の跡がつきます.それによって,デヴァイスがたどった軌跡が残るわけです.「オープン・スペース」での展示では,それぞれ約10分間点灯するようにタイマー制御された照明を10個使っています.デヴァイスは,照明から照明へと進みながら,通った跡を木炭で残していきます.会期中にデヴァイスが通った跡が蓄積されたものが,最終的にドローイングとして完成します.


《ソナー・ドローイング・デヴァイス》は,超音波距離計(ソナー)を用いて対象物との距離を測ることで,空間内にある物体や人間を検知しています.測定されたデータは,縮小してからアーム部分に送られます.デヴァイスが円形に回転すると,データに基づいてアームが伸びたり縮んだりします.ドローイング・アームの先端には木炭がついていて,アームの動きに応じて紙の上に跡を残します.その結果,空間内の物体や人々について集められた情報の蓄積として、ドローイングができあがります.


わたしは,収集したデータに反応する装置,状況を作ることに関心があります.また,それによって可視化されたデータを,美的なものとして捉えるのが好きです.
 わたしが作った多くの作品では,機械と自然——波のデータや光への反応,また人が動いている様子など,自然からのインプットということですが——という異なるシステムを両方使っています.はじめは,二つのシステムにおける形態的なコントラストにひかれていたのですが,やっていくうちに,自然のものが,しばしばとても反復的で,予測しやすいふるまいをすることに気づきました.同様に,ロボットのような機械が,不安定で予測できない動きをすることがあることも分かりました.機械が予測不可能な動きをするのは,機構部分やそれを動かすプログラムのなかにバグがあるからなのですが,むしろそれがあるからこそ,私は自分の作品に興味を持ち続けていられるのだと思います.いったんデヴァイスや状況を作ったら,もうそこからは自分の手を離して,その環境を勝手に展開させるのが好きです.


お客さんには,作品を自由に見て,好きなように解釈してほしいと思っています.《フォトトロピック・ドローイング・デヴァイス》でいえば,まずみなさんは「小さくてかわいらしいロボットだなあ」と感じると思います.もちろんそれだけでもいいんですが,それを出発点にして,もっと深く解釈することもできると思うんですね.「生物とはなにか?」とか,「生物の活動をつきうごかす動機はなにか?」とか……さらにいえば,生と死についても考えることができるのではないでしょうか.あと,ときどきデヴァイスが光源の近くまで行き着けずに,充電が切れてしまうことがありますが,そんなときは,お客さんがお望みなら,デヴァイスの力が及ばない遠くまで導いてもいいと思うんです(※).というわけで,お客さんには,自分だけのやりかたで作品を体験し,解釈してもらいたいので,あえてオープンな形で作品を展示しています.


※「オープン・スペース 2011」では,作品保護の観点から,作品へはお手を触れないよう鑑賞者の方にお願いしております.


チャンネルICC
デイヴィッド・ボウエン インタヴュー 音声/6分32秒


■「オープン・スペース 2011」デイヴィッド・ボウエン 出品作品
《ソナー・ドローイング・デヴァイス》《フォトトロピック・ドローイング・デヴァイス》
《テレプレゼント・ウォーター》
会期:2011年10月22日(土)—2012年3月18日(日)


[Y.Y.]