ICC

《モジュローブ》
"Modulobe"
2005
江渡浩一郎
撮影:木奥惠三
《モジュローブ》は,モジュールと呼ばれる部品を組み合わせて,簡単に仮想生物としての「動く3Dモデル」を作ることができる物理シミュレーション・システムです.ブロックのように自由に形をつくり,そこに動くモジュールを追加することで,モデルに動きを指示することができます.また,この仮想空間においては,現実の物理法則がシミュレートされているため,生物のようなリアルな動きを再現することができます.
この作品は,インターネットにおいて公開され,ユーザーが使用できる「新しいキャンヴァス」となるようなシステムを意図して制作されたソフトウェアです.その特長のひとつに,インターネットでユーザーが作品を共有できるということがあります.ユーザーが制作したモデルは,モデル共有サイトに自由に投稿でき,かつそこにアクセスする人たちがモデルをダウンロードし,それを改造し,また投稿することができます.作品自体は,モデルを制作するための基本的な要素のみから成り立っていますが,こうした「想像力の土台」として機能することで,そこで生み出されるモデルは多種多様なものとなっていきます.ここでは作者は,システムを作り「表現の場」を提供するという立場になっています.

《モジュローブ》ウェブページ
江渡浩一郎は,ネットワーク系技術などの研究に携わりながら,メディア・アーティストとして活動している.ネットワークを用いた活動歴は長く,インターネットを利用した活動や作品制作をいちはやく手掛ける.個人としてだけでなく,グループでの作品制作や,ほかの作家への制作協力なども数多く行なう.

協力:独立行政法人 産業技術総合研究所,山口情報芸術センター(YCAM)
モジュローブプロジェクトメンバー:江渡浩一郎,渡辺訓章,櫻井稔,谷口暁彦,小町谷圭,久井亨,小倉順子,前川峻志,川崎禎紀,山口優
プラットフォーム
近年,特にインターネットを利用した作品のなかで,システム自体を作品とするものが多く見られるようになりました.このような作品では,作者はプラットフォーム(基礎部分)としての制作環境を提供するにとどまり,それをどのように使うかは鑑賞者自身にゆだねられています.また,鑑賞者の制作物を蓄積し,データベースとして活用できるようにすることで,新たなコミュニケーションの場の創出も意図されています.