eナントカに ITうんちゃらについての断想

1.3 ネットワーク人口の成長

さらにインターネットへのアクセスをもっている人の数が,今後まだまだ増大する,というのが収益増大を語る大きな論拠になっていることもある.例えばアマゾンはいまは赤字だけれど,いまのうちにナンバーワンの地位を確立しておけば,今後新規のユーザがどんどんネット上にやってきたのを一網打尽で集められるし,そうなったら高いマージンをふっかけて大儲けができるようになる,という話だ.

でも,これも疑問ではある.例えばアメリカでは,1999年後半のインターネット・ユーザ数の伸び率は,年率60パーセントから13パーセントに下がってしまったという.まあ「インターネット人口」と称するものもいろいろ数え方があるので,これをそのまま鵜呑みにすることはできないのだけれど,もうかつてほどの伸びは期待できないのかもしれない.さらに今後インターネットに接続する人,というのはどういう人々だろうか.現状では,すでにちょっとした小金持ちはみんなコンピュータくらい持っているだろうし,インターネット接続もできるはずだ.それができていない人々というのは,じつはかなり所得が低く,市場としてあまり魅力的でないセクターなのかもしれない.

また,「いまのうち赤字を出してもナンバーワンの座を確保しておけば」という議論(これはよく「ユーザの囲い込み」と称する話になる)もどこまで成立するかどうか.例えばWebのブラウザが,まずはNCSA Mosaicの完全独占市場で,それが一瞬にしてNetscapeにとってかわられ,そしてそれが徐々にInternet Explorerにとってかわられたのを考えてほしい.あるいは携帯電話の機種交換でも.ナンバーワンの座を確保するのはむずかしいし,それを維持するのはもっとむずかしい.

さらにもう一つ.オンライン・ショッピングは目新しいし,いままで欲しくても見つからなかったものが簡単に見つかることで,使いはじめにはかなりの需要がある.ぼくも初めてアマゾンにアクセスした頃には,マイナー作家のすごくマイナーな本を次々に注文してみたり,かなり大量に注文をしている.あるいは,ついついリチャード・ドーキンスの本を全部買ってみたり.しかし,やがて注文量はだんだん減ってくる.ふつうの本屋での買い物といっしょだ.大きな本屋が近くにできると,いままで買おうと思っていながら近くの本屋になかった本をしばらくはガンガン買ってしまうけれど,だんだん飽きてくるし,欲しい本がだいたいそろってしまえば,あとはもうすごく低いところで横這いになる.新規ユーザがどんどん出てくれば,これは問題にならない.しかしそれが頭打ちになったら? これはどこまで有望だろうか.


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