IT革命に賭ける

――8月上旬に東証マザーズに上場されますが,1000株からでも上場できるマザーズで15万株というのは新興企業では破格に多い株式発行数です.流通株式数を少なくして希少性を高めることで,少しでも株を高く売ろうとする会社が多い中で,反対に流通量を増やして理論株価を低くする理由は?

松本──多くの個人投資家にIPOに参加いただけるようにするためです.それに,高値で売り抜けて投資家が損をして会社だけ儲かっても話になりません.小さく産んで大きく育てるほうが,お互いにメリットがあります.お客様の利益や社会の利益や株主の利益や企業の利益は,そんなに違う向きである必要はないと思います.短期的には少しずれることがあっても,やりようによっては最終的にはみな同じ方向なのではないかという気がします.そういうふうに全部同じ方向に向くように組み立てたほうが,こちらも気負いがなくて楽なんです.

──マネックス証券の経営方針としてインターネット時代の金融インフラを担うと謳ってますが,その具体像は?

松本──何となくみんなが意識しないで使う水のような存在ですね.電話が登場した頃は,相手の顔も見えないのに電話でものを買うことなど考えられなかったと思います.それがいまではごく普通のことになっています.よく考えると電話で株とか債券を何億円も売り買いするなんて,怖い話です.本当に相手がいるかどうかわからないわけですから.でもそんなことを言う人は一人もいません.

インターネットだって同じです.いまは何となく心配だと言う人もいますが,ずいぶん減りました.ITベンチャーと言いますが,近未来には当たり前の存在になると思います.「インターネット時代の金融インフラ」というのも同様に,当たり前で気がつかないような存在になっていくと思います.


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