IT革命に賭ける
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――よくある50パーセントずつの折半出資ではダメなのでしょうか? 松本──50パーセントずつではアカウンタビリティが明らかじゃないから,会社の責任の所在が不明瞭で,いいことではありません.やはり一般論として,どちらかに傾けるべきだと思います. ――ゴールドマン・サックス在職中に,ソニーとは水面下で交渉をなさっていたのですか? 松本――いえ,98年10月20日に辞表を出し,それから提携先を探しました.ソニーとの交渉がはじまったのは,その翌月,出井社長にお会いしてからです.それ以前にほかのソニーの方と下交渉などもしていません. ――ソニーのような世界的企業を相手に,最後まで自分の主張を変えないのはすごいことだと思いますが,もしソニーと決裂したら,どうされましたか? 松本――それでも,マネックス証券は立ち上げるつもりでした.初めにソニーありき,だったわけではありません.ほかの提携企業を探すか,自分たちだけで立ち上げるか,いずれにせよ,やる気でした. ──やれるという確信があったのでしょうか? 松本──確信はありませんでした.いつだって確信はないです. 結果として,ソニーと提携できたことは,最高のパートナーに恵まれたと思っています.運がよかった,という面もあるかもしれませんが,運はあてずっぽうなものじゃなくて,どこか必然のようなものがあると思います. ――ソニーとの提携は成功だったわけですね. 松本――はい,マネックス証券が,100万円まで成り行き注文で1000円という業界最低水準の株式売買手数料を維持できる大きな理由は,広告宣伝費をほとんど使っていないからです.現在,1億円超しか使っていませんが,同業他社は,おそらく数十億円使っていると思います.これを手数料で回収するのは大変なことです.それに利用者にとっては,その高額な広告宣伝費が上乗せされて手数料が高いというのは納得がいかない話です.マネックス証券が広告宣伝費を使わなくても顧客が集められる理由は,ソニーのブランド力によるところも多いでしょう.もし,ソニーとの提携がなければ,マネックス証券のブランドを確立するのに,多大な広告宣伝費が必要だったかも知れません. ――でも,マネックス証券がソニーの完全な支配下にあると思われても困るのでは? 松本――「ソニーが応援する証券会社」というイメージを出すのにいろいろ知恵を絞っています.マネックス証券の設立など重要なイヴェントのときには,正規の広告料を払ってソニービルにマネックス証券の大懸垂幕を張ったりしています.ソニービルですからマネックス証券のロゴの上に合法的にSONYのロゴがあるのです. |
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