IT革命に賭ける
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ソニーとの提携――出井社長との出会い ――マネックス証券は,『日経マネー』誌(2000年1月号)が実施した投資家2600人のアンケートに基づくオンライン証券ランキング[表1]では大手証券会社をおさえて総合1位に輝くなど顧客の評判は最高クラスで,口座数でも7万人を突破し,ネット専業のオンライン証券で第2位と健闘されてます. マネックス証券の立ち上げに際して松本さんは,ソニーと提携して大きな話題となりましたが,その経緯をお聞かせください. 松本――インターネット証券は,個人投資家が対象ですから,強力なブランド力によるクレディビリティが絶対に必要だと考えていました.ソニー,NTT,トヨタなどの企業との提携が頭の中にありました. そんなおり,98年11月上旬の午後9時過ぎ頃に,私の話をときおり聞いてくださっていた,さる経済人の方から私の携帯電話に連絡が入りました.「いま,銀座の小料理屋でソニーの出井社長と食事をしているから,われわれのところへ来ないか」という誘いでした.私はすぐさま飛んでいき,その席で出井社長にインターネット証券のビジネス・プランを説明しました. もう一度同じ月に出井社長と朝食をとりましたが,出井社長は私の話を聞くと,サッと携帯電話を取り出し,ソニーの社員に,その日のうちに私に会うよう指示を出しました.そこからソニーとの話が進みはじめました.しかしソニーはすでにインターネットを活用した金融戦略を策定中で,「ソニーの100パーセント出資でインターネット証券会社をつくるから,あなたにソニーに来て欲しい」という申し出もありました.私としては資本的に独立することが独立起業の出発点でしたから,なかなか意見が噛み合わず,新会社の出資比率をめぐって交渉が長引きました. 99年4月の終わりに,ソニー・グループの経営会議があり,そこでマネックス証券の説明をしました.その会議では,「松本氏に頼らなくてもソニーだけでネット証券はできる」「松本氏のビジネス・プランはダメだ」など,率直な意見がたくさん出て,時間オーヴァーで結論がでませんでした.出井社長は,ずっと黙って聞いておられましたが,「ソニーも万能ではない.得手,不得手の分野があると思う」と発言されました. その数日後,私が51パーセント,ソニーが49パーセントの出資比率でマネックス証券を設立する,というソニーからの最終回答がありました.ソニーのクレディビリティに支えてもらいながら,個人のガバナビリティを維持する,というこちらの希望に沿ったもので,私としては最高の結論でした. |
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