終わりなき道の標に

教育者のジレンマ

会津――石井さんがアメリカに行くときの送別会で,「石井さんは既存の研究所に行くより自分の研究所をつくったほうがいい」と言った記憶があります.組織のかたちとして研究所がいいかどうかは別として,メディア・ラボで「タンジブル・ビット」により明らかに一つの流れをつくりましたよね.この流れをもっと大きくするのがエンジニアたちの社会的使命の一つではないかと思います.メディア・ラボは素晴らしいところで,そこを利用するのも一理あると思いますが,石井さんにはできれば自分でオリジナルの研究所をつくってほしいという期待はいまでもあります.

石井――二つの考え方があって,一つは例えばアーティストとして自分の作品をつくりつづけること,もう一つは後進を育てて,僕のヴィジョンを継承し発展させる新しいジェネレーションを育てるということですね.僕自身は人を育てながら,自分の作品もつくりつづけたいのです.でもそれらを両立させるのは並大抵のことではありません.現在は,学生にいい仕事をしてもらうための環境づくりに大部分のエネルギーを取られてしまい,自分自身の作品制作のためのエネルギーも時間もほとんど残らないというディレンマに直面しています.

会津――つくりたいものが100ぐらいあるのではないですか?


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