21世紀に伝えたい本 |
後藤――それは僕もすごく共感できますね.やっぱり中国の文革じゃないけど,赤い小さな語録[IX]と壁新聞で運動をおこしていく.そのための道具として本やエディトリアルがあるっていうのは,基本ですよね.つまり戦略と戦術っていうか,それに合わせたスタイルをつくればいいというね.だから,お金をかけてフェティッシュなものをつくるならこうする,紙一枚でも運動をはじめられる,その両方に行けるのが大切ですよね. 坂本――僕はもちろん実際には見たことないけど,50年代に日本共産党が山村工作隊っていうのやっててさ(笑).上から,あそこの村をオルグしてこいって言われると,自転車の荷台にみかん箱をのせて,そこにマルクス全集とか入れて,山奥の寒村とかに出かけて宣教してまわる(笑).ミッションだね.自転車とみかん箱一つでどこでも行っちゃう,ノマディックな生活でしょ.そういうシンプルさって,カッコイイよね(笑). 後藤――(笑). 坂本――何が言いたいかっていうと,吉本隆明の影響かもしれないけど,あまり本をもたない,溜め込まないでいつも身軽でいたい.いっぱい溜まると捨てたくなるんだ. 後藤――僕は昔からそうなんですが,編集で読んだ本は,たいてい人にあげちゃいますね.だから本棚3壁分ぐらいしかない.最低必要な本だけで,あとは再び必要になったら,もう一度買ったりします.だから,愛書家じゃないですね.それから,図書館を使って膨大に本を借りたりしますね. 坂本――もちろん美しい本は好きだし,その価値も認めるけど,フェティッシュじゃないね,僕たち.本の快楽もわかってるし,持ってたりもするんだけど,同時に平気で捨てられるっていうのかな.だから,昔学生運動で大学の研究室になだれ込んで,知識の蓄積みたいな書棚をメチャクチャにして,本を踏みつけ,その後機動隊の放水で水浸しになって.あの「台なしになっちゃう感じ」って,快感だったなあ(笑). |
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