SRLカタルシス |
NF ――そうすると,80 年代後期のNEA 問題[★4 ]とも関わっていましたね? MP ――ああ,僕も巻き込まれたよ(笑).実はニューヨーク州のアートパークという小さな町でショーをやることになっていた.いい町だった.ちょうどキリスト教原理主義者たちがメイプルソープの展覧会に抗議したり,いろんなアーティストを槍玉に上げて,自分たちの存在をアピールしていた時期だったんで,あるアイディアを思いついたんだ.田舎から出てきたキリスト教信者たちが都会に進出しようというんなら,こっちも反キリスト教のレトリックとか都会的振舞いというものを田舎にもっていって,そでどうなるか見てやろうじゃないかと.それでこそフェアというものさ.キリスト教右派のイデオロギーをショーで揶揄して,真っ向から勝負してやろう.そう決めたんだ. NF ――カレン・フィンリーも反NEA 問題で有名なアーティストですが,そのとき,彼女も一緒にアクションをしてたんですか? MP ――そう,彼女も攻撃対象になっていて,助成金を帳消しにされたこともあった.彼女は相手を訴えて勝訴し,その助成金を取り戻したと記憶している.だが,それも果てしない戦いの一幕で,厳しい時期だったよ.当時は,キリスト教原理主義者たちはアメリカ人をまったくジョークの通じない国民に仕立て上げようとしていたんだな.そして悲しいかな,大衆もそれに雷同してしまった.長いあいだ,アメリカというのは自分自身を笑えない国だったんだ.いまは違うけどね. NF ――80 年代後半のアンチNEA 運動の顛末はどうなったんでしょうか? MP ――80 年代以前はどこのギャラリーも典型的なアートをやっていたし,1 年に1 回は道徳的に問題になりそうな展覧会をやっていた.僕たちもそういったプログラムのお陰でショーをやるチャンスが結構あったんだ.でもいまはそういう危険なものをプロデュースするところは皆無になった.あるとすればアーティストがセルフ・プロデュースしたものだけ.過激なことをするギャラリーはまったくと言っていいほどなくなってしまった. |
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