新たな文化・社会の情報基盤としての次世代インターネット

地方分散は進むか

 

青山――昔,私がまだ子供の頃は○○県のナントカ町に行きますと,そこ特有の景観があり,一度行けばそれはどこだ,とすぐわかりました.それが1980年代ぐらいかな,ある程度大きな市の繁華街に行くと,日本全国どこも同じようで,そこだけ見ると「ここはどこだ」と言えなくなってきましたね.同じような雑居ビルに同じようなネオンサイン,アーケードがあって,歩道にカラフルな舗装がしてあって,などなど.仙台も福岡も町の中心は皆東京のミニ版みたいになって,その町固有の特色がなくなって私はとても寂しいですよ.
景色だけではなくて,それぞれのローカル・センターがほかにはない役割を果たす,マルチセンターになってほしいのですが,中心はすべて東京一極に集中し,それ以外は大幅にスケール・ダウンしたミニ東京が東京にぶらさがっている状況です.ちょうどメインフレーム・コンピュータに機能の低いデータ端末がつながっている昔のコンピュータ・システムのようです.

 これに対して,アメリカはいまのサーバークライアントの分散処理システムのようですね.経済はニューヨーク,政治はワシントン,コンピュータはシリコン・ヴァレー,映画はハリウッド,農産物取り引きはシカゴ,などなど,各都市がそれぞれの分野のセンターとしてほかにはない固有の機構をもっています.
日本は従来より東京一極集中で,地方分散化が何度も叫ばれてきましたが,いま,地方のローカル都市がどんどんさびれてきていて,中心の商店街が次々に店をたたんで荒廃してきている,それをなんとか立て直さなければならない,という危機感が充満しているようです.
地方都市をミニ東京化するというコンセプトは限界にきており,ほかにはないその町独特の機能と特色を出さないと,ミニ東京なら,ほんとの東京に行ったほうがよいわけで,ますますさびれていくでしょう.ミニ東京化するための箱ものを次々建造するより,次世代インターネットの強力な情報発信機能を生かし,距離のハンデを軽減できる情報インフラを利用して,地方都市,地方文化の再構築を行なうことが可能だし,その絶好のチャンスが到来すると思うのです.

武邑――そうですね.自治省でもいま,デジタル・ミュージアムという施策を始めようとしていて,去年,実証実験を行なったんです.全国十数か所の,いわゆる県立美術館だけではなくて,地域の特有の伝統的な,あるいはインタレスト・コミュニティが情報発信をするということに対して支援をする.それを全国の地域情報化の一つのコア・ファクターにして,地域コンテントを形成していく基盤をつくる.

 これが建設されてくると,地理的な,あるいはこれまでの県単位,市単位,町単位というような地理的な環境ではなくて,まったくヴァーチュアルな,あるいはコミュニティの,さっき言いました関心の重力空間によって新しい構造をつくり上げる.そこの現実空間としては,80年代後半のバブル経済期に建てられたような死に体の文化施設が再活性化する可能性が出てきているわけです.

前のページへleft right次のページへ