ジェームズ・タレル・インタヴュー: 光に触れる意識 |
インタヴュー後記
普通私たちは直面する問題を身体の運動によって一気に解いている.サッカーのエース・ストライカーのシュートを,素人のへたくそな絵を劇的に変える熟練した画家の筆使いを,オムレツをつくるシェフのフライパン捌きを思い起こしてほしい.ロシアの生理学者ニコライ・ベルンシュタインはこのような運動を「巧みさ」とよび,「巧みさ」とは,まだいくつもの鍵がロックされた状態の世界を開ける完全な鍵をつくることだと言った.ストライカーや画家やシェフの身体は世界の一部を開けつづけている特別熟練した鍵である[★9].このような「巧みな」運動がしていることが「知覚の跳躍」である.そして跳躍した身体だけが見ている世界がある. ジェームズ・タレル──1943年,アメリカ,ロサンゼルス生まれ.65年,ポモナ・カレッジで知覚心理学・数学の学位を取得.カリフォルニア大学大学院で美術を学び,73年にクレアモント大学大学院で芸術修士号を取得.その後アメリカ航空宇宙局内の航空研究所で研究.光を使ったインスタレーション作品を制作し,67年のパサディナ美術館での初の個展をはじめ,世界の主要な美術館での個展を開催.現在《ローデン・クレーター・プロジェクト》のために設立したスカイ・ストーン・ファウンデーションを基点に21世紀の完成を目指して活動している. ささき・まさと──1952年北海道生まれ.東京大学院教育学研究科教授.著書=『からだ――認識の原点』(東京大学出版会),『アフォーダンス 新しい認知の理論』(岩波科学ライブラリー),『複雑系の科学と現代思想シリーズ2 アフォーダンス』(青土社,共著)など. [「ジェームズ・タレル展――夢のなかの光はどこからくるのか?」は,1997年10月10日−12月7日,埼玉県立近代美術館/1998年1月31日−3月29日,名古屋市美術館/8月15日−10月25日,世田谷美術館で開催された] |
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