ウィリアム・バクストン・インタヴュー An Interview with William Buxton
ウィリアム・バクストン William Buxton 森山和道=インタヴュアー INTERVIEWER:MORIYAMA Kazumichi 山田和子訳 Translation: YAMADA Kazuko
一言で言えば「テレプレゼンス」とは,〈プレゼンス=いま・ここ〉の感覚を〈あのとき・あそこ〉の感覚へと拡張することである.人は言語をもつことによって〈いま・ここ〉を超える概念を獲得した.つまり〈あのとき・あそこ〉の感覚を他人に伝達し,概念として取り扱う能力を得たのである.今日,振り返ってみれば,これがテレプレゼンスの誕生であったと言えるだろう.われわれはテレプレゼンスの感覚を獲得したことにより,コミュニケーションと社会を生んだのだ. 以来人間は,よりリアルな臨場感──〈あのとき・あそこ〉の感覚──を伴ったコミュニケーションを実現しようとしつづけ,テクノロジーはわれわれの感覚を拡張しつづけてきた.それは同時にいかにリアルに〈あのとき・あそこ〉の感覚を再現するかという挑戦の歴史でもある.コミュニケーション・テクノロジーが「拡張する空間」としてのコンピュータと融合しつつある現在,ユビキタス・コンピューティングにより,テレプレゼンスからマルチプレゼンス,そしてユビキタスへと拡張されつつあるわれわれのプレゼンス.その実現のためにはどのようなテクノロジーが必要なのか.〈プレゼンス〉とは何かを理解するために,ウィリアム・バクストンにテレプレゼンス・デザインのコンセプトについて,インタヴューを行なった.