InterCommunication No.13 1995 |
![]() |
Feature |
デジタル・キャッシュから「超流通」経済へ
渡辺保史 e-mail HGA00404@niftyserve.or.jp/yas-w@po.iijnet.or.jp
(わたなべ やすし・メディア論)
★1
★2
★3
*速度のアップ(Increased Velocity)
*連続性(Continuity)
*際限なく代替可能(Unlimited Fungibility)
*アクセスしやすい(Accessibility)
*私中心主義(Privatization)
デヴィッド・チョム,岩井克人,森亮一らへのインタヴュー,デジタル・キャッシュ
実現へ向かう各国の状況やその社会的インパクトについて収録した『デジタル・
キャッシュの衝撃(仮)』がアスキー出版局より95年近刊予定.
電子メール・アドレスはnetinfo@mpt.go.jp,KNH92871@pcvan.or.jp,
LDJ04455@niftyserve.or.jp(なお,研究会は95年6月末までの開催).
ケヴィン・ケリーは「デジタル・キャッシュはバッチモードの紙幣と置き換わ
るだろう.全ての取り引きがリアルタイム化し,ネガティヴに言えばアンダー
ワイアー(非公式)な経済がブームとなる.クリエイティヴな範囲が広がり,
現在ではそれらは目に見えないように暗号化されたネットワークに接続されて
いく」と語り,その社会的インパクトを次のように整理している.「私たちの
ネットワーク経済の中心地ではデジタル・マネーの影響が既に現われはじめて
います.以下の5項目が予想されます.
貨幣は現実性を取り去るとき,すなわち物質をベースにしたものを全て取り除
くと,速度がアップします.より遠く,より速く移動します.貨幣の回転が速
くなることは貨幣の流通量が増えることと同様の効果があります.衛星が打ち
上げられ,光速に近い速さで24時間,世界的な株取り引きが可能となり,グロ
ーバル・マネーの合計が5%増加しました.広範囲で使われるデジタル・キャ
ッシュは貨幣の速度をさらに加速するでしょう.
金や貴重な物質や紙で構成されている貨幣は決められた時間に支払われ,決められ
た単位で入ってきます.ATM機は20ドル札を吐き出すだけなのです.あなたが
電話を毎日使っていても電話会社への支払いは月に1度です.これはバッチモ
ード・マネーと言えます.エレクトロニック・マネーは連続的に流通していま
す.これによって連続的に発生する支出を払えるようにします.アルビン・ト
フラーの表現を借りれば“分単位で,銀行口座から小さな水滴のように電子的
に搾り取られる”と言えます.あなたのeマネーは電話をかけるたびに受話器
を置くと同時に支払われます.もしかすると話しているときかもしれません.
支払いは使用と同時に生じます.その速さとともに連続的なエレクトロニック
・マネーは即時性に近づけます.これは“フロート(float)”によって現在
多くの利益を得ている銀行を悩ませます.なぜなら即時性は浮遊を消滅させて
しまうからです.
いったん完全に現実性を取り除かれると,デジタルマネーはひとつの伝送方法から
抜けだしもっともハンディなメディアへとどんどん流れていきます.請求行為はモノ
やサービスそれ自体といっしょに綴じ込まれるかもしれません.ビデオの請求
書はビデオのなかに組み込まれてきます.送付書はバーコードのそばに書き込
まれ,レーザーでさっとなぞるだけで支払われます.電子課金ができるあらゆ
るものが実際に決済できるのです.外国為替は変化の象徴となります.貨幣は
デジタル情報と同様に人に影響されやすいものです.これは従来の経済では絶
対に起こらなかった通貨鋳造の変化と双方向性を容易にします.ネットワーク
上のビジネスが解禁になるのです.
これまでは,巧妙な貨幣の市場操作はプロの金融研究者いわゆる金融聖職者の排他
領域でした.しかし100万台のマッキントッシュが,メインフレーム・コンピ
ュータへのアクセスを妨げてきた高位の聖職者の独占を破壊したように,eマ
ネーは金融インテリたちの独占を破壊するでしょう.想像してみてください.
電子送付書の上にアイコンをドラッグすれば,利息を受け取れるのです.想像
してみてください.“利息支払い”アイコンであなたは取り立てができ,さま
ざまな利息を与え,アイコンは年が経つごとに膨らんでいくのです.また早期
に支払いをするときは分単位で利息を計算できるかもしれません.またあなた
のパソコンをプライムレートによって請求支払い方法を変えるようにプログラ
ムすることもできます.素人のための請求トレーディング・プログラムとでも
言いましょうか.あるいは支払い時に最も安くつく交換レートを意識してコン
ピュータを操作することもできます.いったん大衆がプロと同様のエレクトロ
ニックマネーの水を飲めば,すばらしい金融業界の慣習はうわべだけのものに
なるでしょう.切り捨てるリストの中に私たちは金融を加えることになります
.私たちはプログラムされた資本主義に向かっています.
eマネーを容易につかまえ,移動し,変形することは,私的流通に
とって理想的です.2兆140億円がNTTのテレホンカードによって保留されてい
ることは,私的流通のある限定タイプと言えます.ネットワークの掟にはこう
あります.“コンピュータを持っている人は印刷機だけでなく,eマネーとリ
ンクすることにより造幣局も持つことになります.準流通が信用のあるあらゆ
る場所で起こりえます(そして同時に失敗も)”」(「ネットワーク経済,文
化」,今岡清編『接続する社会』[Expanded Book],1994).
郵政省電気通信局データ通信課課長補佐・小原昇氏
大蔵省銀行局
オリエントコーポレーション企画部市場開発チーム課長・増渕正明氏
マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン プリンシパル・平野正雄氏
筑波大学名誉教授,神奈川工科大学教授・森亮一氏
No.13 総目次 |
Internet Edition 総目次 |
Magazines & Books Page |