ICC

オープン・スペース 2012

《10×10》
2011年
ジョン・ウッド&ポール・ハリソン

撮影:木奥恵三

カメラがひとつの視点から部屋を一望しています.その部屋の中では,男がひとり,壁に色を塗っています.すると,カメラは下方に垂直移動し,床を通りぬけて下の階へと移動していきます.ビルディングの中のように,下の階からまた下の階へ,カメラは各部屋で行なわれている出来事や,部屋の状態を,それぞれの階を通過する時間だけ垣間見ていくのです.

そこではひとりの男が,たくさんの紙飛行機を折って飛ばす,ゴム風船をふくらませる,部屋の中で自転車に乗る,などのものさびしい部屋で退屈そうに無為の行為の数々を行なっています.また,訪れるたびに配置の変わる椅子,毎回変わるポスターに描かれた擬態語,天井までぴったり積み上げられおなじ大きさの段ボール箱などが映し出されます.

その想像上の部屋は10色に色分けされていて,それぞれの部屋で別々の出来事が起こっています.10の部屋をカメラが順番に通過し,それが10回繰り返されます.観客は,カメラが部屋を100回(10階を10回分,というのがこのタイトルの由来です)通過するあいだに,10の部屋それぞれの中で起こる一連の出来事の目撃者となります.それは,映像を見ること,撮影すること,という行為が本質的にのぞき視ることである,ということを思わせるものでもあるでしょう.

ジョン・ウッド&ポール・ハリソン プロフィール

英国を拠点に活動し,1993年より,彫刻,パフォーマンス,建築などの要素を取り入れたヴィデオ作品を共同で制作している.手作りのオブジェや日用品などを用いて,重力,風力,張力といった物理現象によって起こる出来事など,原因と結果によって提示されるようなシンプルなアイデアから,意外性に富んだ,ユーモラスな作品を制作している.