ICC





はじめに
入場料
展示作品




《パーフェクトリィ・ストレンジ》
作品解説 - オリビエ・ルノー
参加作家
 
1997年4月18日(金)〜 5月31日(土) [終了しました.] 東京オペラシティ1F,ICC 4F ロビー





展示作品


《パーフェクトリィ・ストレンジ》
"Perfectly Strange"









「パーフェクトリィ・ストレンジ」は,異なった場所に設置され,互いにインターネットで結ばれた2つのインスタント写真撮影ボックスから成っている.通常の3分間写真と同じように,使用者は目前に映った自分の顔を見ながら写真を撮ることになるのだが,数分後に手にするのは自分の写真ではなく,同様にして写真を撮った見知らぬ他人の顔写真なのである.インターネットによって顔写真は撮影された瞬間に記憶され,もう一方の装置の前に座った他人の元へと無作為に送り届けられ印画されるのだ.ボックスは容易に解体でき,同時に旅行用ケースにも成る.インタラクティヴな2つのボックスは,さまざまな場所に移動できるように可能な限り高い移動性を持っていなければならない.このプロジェクトは,4月8日からまず東京とパリを結んで開始され,以後,さまざまな地点を連結しながら続けられていく.
重要なのは,自らの同一性を他人の同一性に対峙させるということだ.通常の3分間写真は身分証明書用の写真を撮る為に使われるが,そうやって撮られた写真は,現代社会における自己同一性というものの,いわばステレオタイプといえる.というのも,そうした写真は似ているということのほかに付加価値を帯びてしまっているからであり,写真のほうが今度はその所有者の公的な身分証明として機能してしまうからである.「パーフェクトリィ・ストレンジ」に使われているインターネットで結ばれた2つのボックスは,写真を撮った者に赤の他人の写真を返してよこす.それは,直前に撮った人の写真でもなければ,同じ町に住んでいる人の写真でもなく,遠く離れた地に住む実際に会うことのない1人の人物のステレオタイプだ.自分自身の像が見知らぬ他人のステレオタイプと入れ替わり,印画された他人の像が自分の写真を撮ったばかりの人の所有に帰すのである.
このプロジェクトにはその他にも移動というコンセプトがある.ボックスは旅行用ケ ースへと変身するが,取っ手や差し金や金具,あるいはその他「フライト・ケース」特有の外観は,ボックスが設置された時点でもむき出しになっているのだ.荷札には行われた旅を示した発送人と受取人の住所が記されていても,実際に移動するのはボックスだけであり,観客-作者である写真の撮り手はといえば,ヴァーチュアルで非現実的な世界を体験するだけで,実際の旅に参加することはないのだ.