2017年,坂本龍一はオリジナル・アルバムとしては8年ぶりの新作『async』を発表しました.それに合わせて,坂本と『サウンド&レコーディング・マガジン』(リットーミュージック)の共同により,「坂本龍一|設置音楽コンテスト」と題したマルチチャンネル作品のコンテストが開催されました.
本上演プログラムでは,最優秀作2作品,優秀作1作品,佳作6作品の全入賞作品を,マルチチャンネル環境でご鑑賞いただけます.
入賞作品
最優秀
Tanapon CHIWINPITI《...auf sprechen》
電子音と具体音のミックスのさせ方がとてもセンシティブ.それらの音の空間の配置もとてもよいので,VR作品を見ている/聴いているかのよう.こういう音楽はサラウンドという環境からインスパイアされるところも大きいのではないか.いつまでも聴いていたい.(坂本龍一)
最優秀
MIYAKI Asako《Afterimage》
ドラマ性がとても強い.短い時間のなかに,映画のシーンのようにカットや感情や状況が変わっていくのが面白い.抽象的なVR作品ではなく,ドラマを見ているかのよう.(坂本龍一)
優秀
MATSUMOTO Akihiko《Preludes for Piano Multichannel Installation Version》
これは多分ピアノの音だけを素材に,音をプロセスして作り上げたものだろう.とてもコンセプチュアルな作品.たくさんのヴァリエーションができそうだ.(坂本龍一)
佳作
Markus MUENCH《field_》
HISHIYAMA Shota《Fetus》
FUKUSHIMA Satoshi《gladiolus white》
ISOZAKI Shogo《projection》
Co-Sonus (YAMADA Megumi & FUKUSHIMA Chigusa)《Co-Sonus》
HIRANO Mayu《kiun no ma》
坂本龍一による総評
「最優秀」「優秀」「佳作」も含めて,それぞれ空間的な配慮がよくされている.一部の現代音楽を除いて,例えオーケストラだとしても,その音楽の発想や作り方は2次元の空間時間に基づいていたと思う.そしてその期間は数世紀と長かった.一方ヨーロッパ以外では3次元的な発想の音楽もあった.あるいはヨーロッパにおいても,輪になって歌いながら踊る音楽/ダンスは3次元的なものと言えよう.今後,大きく3次元であるからこそ発想できる音楽が生まれてくる予感がする.