本来,音を記録/再生するための装置であるオープンリールのテープレコーダーが,コンピュータで制御できるように改造されて,新たに音楽表現のための装置として生まれ変わっています.マイクから入力された音声は,レコーダーに録音されると,3台のレコーダー同士の同期やリールの回転速度の変化といった機器の動きによって再構成され,アナログ独特の音色をもった,懐かしくも新しいサウンドが演奏されます.
オープンリールは,現在では,ハードディスクなどのデジタル記録方式に移行しつつある,磁気テープに音声を記録するアナログ記録方式による録音機器です.リールに巻きとられたテープは大きく,レコーダーにセットするのにもちょっとした技術が必要なため,一般的な規格としては簡便で携帯可能なカセット・テープに替わられてきました.この作品は,その旧式な技術の特性を活かしつつ,アナログ技術とデジタル技術の可能性の接点を見いだし,本来の機能や用途とは別の音響装置として制作されたものです.ネットワークを介して3台のレコーダーを連動させたり,テープをコンピュータ制御された外部からの機器で直接振動させてビブラートをかけたりといった,レコーダー自体の「動き」が,入力された音声を音楽として構成していきます.